日本大百科全書(ニッポニカ) 「チュバシ語」の意味・わかりやすい解説
チュバシ語
ちゅばしご
アルタイ語族のなかのチュルク語の一方言。チュワシ語ともいう。ロシア連邦、チュバシア共和国および周辺で話され、ボルガ川上流地域のウィルヤル方言と下流地域のアナトリ方言に大別される。相互に話の通じやすい他のチュルク諸語と異なり、他のチュルク諸族からもっとも早く分離し、宗教的にも他の諸族から隔絶されていたため、チュバシ語には独特の要素が多く、話し手は他のチュルク諸語の話者と相互理解ができない。たとえば、チュルク語にR方言(tahhar_《9》)とZ方言(toquz_《9》)とあるなかで、チュバシ語のみが前者に属する。また、たとえば複数を表す接辞の形態も、つき方も、他の方言と異なり、「私の馬(複数)」はat-lar-ïmではなく、ut-ǎm-sem(馬‐私の‐複数)である。
[綾部裕子]