接辞(読み)セツジ

デジタル大辞泉 「接辞」の意味・読み・例文・類語

せつ‐じ【接辞】

語構成要素の一。単独で用いられることがなく、常に他の語に付いて、それにある意味用法を添加するもの。語の上に付くものを接頭語、語の下に付くものを接尾語という。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「接辞」の意味・読み・例文・類語

せつ‐じ【接辞】

  1. 〘 名詞 〙 語構成要素の一つ。みずからは単独に用いられず、常に他の語(語基)に添加され、それと一続きに発音されて、一語を構成する要素。語基の前に加わるものを接頭語、後に加わるものを接尾語、中間に挿入されるものを接中辞または内接辞と呼ぶ。接中辞は、古代印欧語(ラテン語など)やコーカシア語などで重用されているが日本語には存在しない。派生に当たって、もとの単語意義上の修飾を加えるだけのものと、意義を加えるとともに新たに別の品詞資格を与えるものとがある。日本語では、接頭語は前者に属し、接尾語はその両者を含んでいる。
    1. [初出の実例]「単語の意義資格に影響を与ふるものとして接辞といふものあり。こは体言、用言、副詞すべて独立の観念を有する単語に副ひて其が本来の意義の上に更に種々の意義を添へ又は語の資格をかへしむる用をなす一種の語根的のものなり」(出典:日本文法論(1902‐08)〈山田孝雄〉一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「接辞」の意味・わかりやすい解説

接辞
せつじ

語の構成要素の一つ。それ自体が独立して用いられることはないが、語基に添加されて新たな語をつくる要素(「拘束形態素」とよぶ)となっている。接辞を添加してできた語を派生語という。語基との相対的な位置関係により、接頭語、接尾語に分かれる。世界の言語のなかには、タガログ語のように、接中辞をもつものもある。

 接辞は、それ自体がなんらかの意味を表しているが、(1)意味だけを添えるものと、(2)語基の語の文法上の性質を変える(たとえば、その品詞を変える)ものとがある。たとえば、「茶」「細い」は(1)の例であり、「悲し」「まるめる」は(2)の例である。接頭語は大部分が(1)に属し、接尾語は(1)(2)の両方がある。日本語では、前述の例のような和語系のものに加えて、「非―」「反―」「―的」「―性」のような漢語系のもの、「アンチ―」「―イズム」のような外来系のものが造語力をもつようになってきた。

[杉浦茂夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「接辞」の意味・わかりやすい解説

接辞【せつじ】

言語学用語。単独で用いられず,常に他の単語または語根語幹に付加されて,派生および語形変化を担う形態素。接合する位置によって接頭辞,接中辞,接尾辞がある。〈disarm〉の〈dis〉,〈ま昼〉の〈ま〉は接頭辞,〈freedom〉の〈dom〉,〈神さま〉の〈さま〉は接尾辞の例。英語や日本語には接中辞はない。
→関連項目語根語尾再帰動詞相(言語)派生語複合語

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「接辞」の意味・わかりやすい解説

接辞
せつじ
affix

語根ないし語幹に接合される接合形式の総称。すなわち,それ自身単独では決して用いられず,常に語根など他の形式に続けて発話され,その語義的・文法的意義特徴を変更する働きをする言語形式。そのつく位置により,接頭辞接中辞接尾辞という。その機能により派生 (語幹形成) 接辞と替変接辞に分けられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の接辞の言及

【言語】より

…屈折には,語形のある部分を1個所,かつ,それを全体として交替させるというものと,ある部分に交替しうる複数の要素が並んでいるもの,2個所以上で交替を示すものなどがある。このような交替する要素は〈接辞〉と呼ばれるが,正確を期するためには〈屈折接辞〉とでも呼ぶべきである。屈折接辞は,音形のちがいを無視して意味の同じものを同一物と考えると,ある品詞に属する単語(の本体,すなわち〈語幹〉)には原則としてそのすべてに直接もしくは間接的に接続しうる。…

【語形成】より

…〈サカナ〉は,本来は〈サカ(酒)・ナ(菜)〉であったが,今日では1語であり複合語とは認められない(これを〈仮装複合語〉のごとく呼ぶのは歴史的観点より見たものである)。(2)派生 語幹に接辞(接頭辞,接尾辞など)を付して新語を作ること。接辞は独立の単語ではないため,複合と区別される。…

【語尾】より

…なお,派生語尾がついてできあがった語幹や単語が長い時間を経過すると,その語尾の意味が不明瞭になり,語尾といえるかどうかわからなくなる場合もある。なお,接尾辞は語幹または語根の前に付着する接頭辞,真ん中に割ってはいる接中辞などとともに接辞と総称する。【湯川 恭敏】。…

【接尾語】より

…単語の構成要素の一つ。接頭語とともに接辞という。それ自身は単独で用いられず,常に他の単語(または単語の中心的意味を負う部分)の後に結合して,いろいろの意味を添える。…

※「接辞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android