ロシア連邦のウドムルチア共和国の主要な住民で、ウラル系ペルミ・フィン語派のウドムルト(ボチャーク)語を使用している。ボチャーク人Votyakともよばれていた。コミ(ジリヤン)人との共通の祖先であるペルミ人が中部ボルガ川地域に移住してきたのは8世紀ごろといわれているが、前者がさらに北(現在のロシア連邦コミ共和国)に移動したのに対して、彼らは13世紀なかばにタタール人の支配下に置かれるまで、この地のボルガル王国領内に暮らしていた。16世紀以降ロシア人に隷属するようになったが、居住地の土地が肥沃(ひよく)なために、単純で原始的な農法でも大麦やエンバクなどの豊かな収穫が得られて、19世紀末まで住民のほとんどが農業によって生計をたてていた。家畜の飼育は家庭用に限られていたが、食生活にはビタミン類を多く含む白樺(しらかば)飲料や各種パイ作りなどにくふうが凝らされ、呪的(じゅてき)な意味からも酒造りは女性の仕事とされてきた。住居は聖なる場所を求めて伝統的な丸木小屋に執着し、さらに彼らの間の交易的な略奪婚は、一方でロシア正教徒の儀礼を取り入れながらも100年前ごろまでは続けられてきたといわれている。若いほど花嫁の値段が高いのは、その労働力が期待されたからだという。ウドムルト語による民族詩人の作品は、すでに20世紀の初めには出版されていて、近年、ほかのウラル系フィン・ウゴール(フィンランド、エストニア、ハンガリーなど)の人々との交流も活発になり、首都のイジェフスクの各学問分野の研究所では研究成果の公刊が盛んである。
[菊川 丞]
ロシア連邦西部にあるウドムルチア共和国のソ連時代の名称。また、同共和国の住民、ウドムルト人を意味する言葉でもある。
[編集部]
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