日本大百科全書(ニッポニカ) 「チューター」の意味・わかりやすい解説
チューター
ちゅーたー
tutor
個人指導教官。イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ両大学で14世紀ごろから取り入れられた。学生は授業のほかに大学を構成する学寮collegeの一つに入寮して生活し、在学中、学寮の特別研究員fellowに1人または数人単位で割り当てられて個別指導を受ける。この個別指導するフェローをチューターとよぶ。学生はチューターから毎週課題とそれに必要な参考文献リストが与えられ、エッセイとよばれる小論文を書き、それをもとに個人指導を受ける。かつてチューターは学生生活全般にわたる指導もしたが、今日では学問的指導を中心にしている。イギリスでは第二次世界大戦後、学寮制度をとらない前記両大学以外でも、セミナーの一貫として研究の個人指導にあたるチューター制を設けている。大学のチューター制度は社会教育にも波及し、20世紀初頭に労働者教育協会などによって開拓された成人教育の分野でも個別指導制が設けられた。
なお、アメリカでは東部の伝統ある大学の草創期に、チューター制がかなり導入されていたが、19世紀に下火となり、今日では一部の大学に残されているにすぎない。ハーバード大学では1年生のみ、プリンストン大学では名称をプリセプターpreceptor(個人指導教官)として、個別指導制を採用している。
[諏訪内敬司]