チリ人民連合政権(読み)チリじんみんれんごうせいけん(英語表記)Chilean Unión Popular coalition government

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チリ人民連合政権」の意味・わかりやすい解説

チリ人民連合政権
チリじんみんれんごうせいけん
Chilean Unión Popular coalition government

1970~73年のチリの左翼連合政権マルクス主義を掲げて民主的選挙で成立した史上初の政府として注目されたが,73年9月軍事クーデターで倒れた。 70年の大統領選挙に際し,社会党共産党などチリの左翼政党は中道急進党をも含む「人民連合 UP」を組み,統一候補の社会党書記長 S.アジェンデ・ゴセンスを僅差で当選させた。アジェンデ・ゴセンスは「社会主義への移行」開始をうたった綱領で公約された,民間企業 81社の国有化,前政権が始めた農地改革の早期完了,国営企業労組の経営参加などを,70年次々実施し,71年7月にはアメリカ系3大銅山会社を国有化した。賃上げや福祉支出などで経済は一時好転し,UPは 71年の地方選挙には勝ったが,やがて3桁インフレが発生,アメリカの援助停止,国際金融界の貸し渋り,銅の価格低下などで国際収支が逼迫し,経済危機が深まった。急進分子が国有化の加速と人民権力の樹立を策して工場・農地・住宅の占拠を進めたため,UP内外で二極分化が進行,議会で過半数を占める野党は対決姿勢に転じ,72年 10月トラック輸送業者の反政府ストライキが発生,11月軍人3人の入閣に反発して UP左派はさらに急進化した。 73年3月議会選挙で UPはわずかに議席をふやしたものの,7月トラック輸送業者,商店主,実業家,医師,技師などのストライキが発生し長期化。この情勢下で9月 11日陸海空3軍と警察が蜂起,アジェンデ・ゴセンスは大統領官邸で抗戦して射殺され,A.ピノチェト・ウガルテ陸軍総司令官の軍事政権が成立した。

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