ツチブタ(英語表記)aardvark
Orycteropus afer

改訂新版 世界大百科事典 「ツチブタ」の意味・わかりやすい解説

ツチブタ (土豚)
aardvark
Orycteropus afer

管歯目ツチブタ科の哺乳類。原始有蹄類の生きのこりと思われ,他に近縁種はなく,この1種だけで管歯目Tubulidentataをつくる。円盤状の鼻をもち,体型も全体にブタに似るが,アリとシロアリを主食とする特殊化した動物。胴が太く首は短い。背がアーチ型に湾曲し四肢は短い。前足に4本,後足に5本の指があり,それぞれ,まっすぐにのびる長くがんじょうなつめがあって,穴を掘るのに適する。頭部はアリクイに似て細長く,アリをなめとるのに使われる長い舌をもつ。耳は長い。毛はまばらで,ブタのそれに似て艶があり,裸出する皮膚は茶灰色。体長100~158cm,尾長44.5~61cm。体重はふつう45~70kgだが,ときに82kgに達する。英名はオランダ語のaade(土)+vark(ブタ)からでている。Cape ant-eater,antbearの別称もある。サハラ以南のアフリカに広く分布するが,とくに土壌が砂質で柔らかなサバンナなどに好んですむ。土中に約45度の角度でふつう長さ2~3mの大きな巣穴を掘り,日中はその巣穴の中で眠り,夜間アリ塚を求めて歩き回る。アリ塚を見つけると,塚の基部に直径30cmほどの穴を開けて,中のシロアリを長い舌でなめとる。行進中のアリを襲うこともある。雌は,妊娠期間7ヵ月で,1産1子を産む。ツチブタの巣穴は,ヤマアラシイボイノシシ,ジャコウネコ,ハイエナ,コウモリ類など多くの哺乳類に隠れ家として利用され,野火を避ける避難所として役だっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツチブタ」の意味・わかりやすい解説

ツチブタ
つちぶた / 土豚
aardvark
[学] Orycteropus afer

哺乳(ほにゅう)綱管歯目ツチブタ科の動物。アフリカ大陸のみに分布する。1種で1目1科を構成するので、管歯類とよばれることもある。頭胴長120~140センチメートル、尾長45~60センチメートル、体重50~80キログラム。頭部は細長く、吻(ふん)は管状で耳は大きい。皮膚は厚く灰褐色か暗褐色をしており、褐色の体毛がまばらに生え、全体がブタに似ている。前肢に4指、後肢に5指があり、前肢の指は大きく頑丈な平づめを有する。幼獣にみられる門歯と犬歯は成獣になると脱落し、前臼歯(きゅうし)と臼歯のみになる。これらの歯は円筒形エナメル質を欠き、小さな六角柱が集合してできている。舌は30センチメートルも口から出すことができ、下顎(かがく)によく発達した唾液腺(だえきせん)を有し、餌(えさ)であるシロアリをなめ取るのに役だつ。胃は単一で、幽門部近くに強い筋肉部があり消化を助ける。子宮は二つで、乳房は胸部、鼠径(そけい)部にそれぞれ1対ある。妊娠期間は7か月ほどで、1産1子まれに2子を産む。

 夜行性で日中は地下に掘った穴に潜む。巧みに穴を掘り、地下のトンネルは長さが30メートルにも及び、中の温度はほぼ24℃で、夜間活動時の外気温と同程度であるといわれる。餌はおもにシロアリで、前肢の大きなつめで巣を壊して食べるばかりでなく、行進中のものも舌でなめ取る。雄は普通単独で暮らし、交尾期にだけ雌と行動をともにするが、雌は次の子が生まれるまで前に産んだ子と生活する。

[齋藤 勝]

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ツチブタ」の解説

ツチブタ
学名:Orycteropus afer

種名 / ツチブタ
科名 / ツチブタ科
解説 / 夜間に単独で活動し、アリづかをこわしてえさを食べます。昼間はあなをほって休みます。
体長 / 1~1.6m/尾長44~71cm/肩高60~65cm
体重 / 40~100kg
食物 / 主食はアリとシロアリ。小動物、野菜も食べる
分布 / サハラ砂ばく以南のサバンナや開けた森林

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツチブタ」の意味・わかりやすい解説

ツチブタ
Orycteropus afer; aardvark

管歯目ツチブタ科。体長 1.5m,体高 65cm,尾長 55cm内外で,外見はブタに似る。口は管状に突き出し,舌が長く 30cmほども口から出すことができる。体は灰褐色から灰黄色の剛毛におおわれる。四肢にそれぞれ,穴掘りに便利な4~5本の大きな平らな爪をもつ。日中は穴の中にひそみ,夜間活動してアリ,シロアリをはじめ昆虫類を食べる。アフリカのサバナや乾燥地帯にすむ。

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百科事典マイペディア 「ツチブタ」の意味・わかりやすい解説

ツチブタ

管歯目ツチブタ科の哺乳(ほにゅう)類。体長1〜1.3m,尾0.4〜0.6m。吻(ふん)はブタに似るが,耳は大きい。淡褐色で頭と尾は灰白色か淡黄白色。サハラ以南のアフリカの草原にすみ,強力な爪(つめ)で穴を掘って生活,夜出てアリ,シロアリを食べる。歯は円柱状でエナメル質を欠く。1腹1子。肉は美味で,食用にされる。

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世界大百科事典(旧版)内のツチブタの言及

【管歯類】より

…子宮は重複性,精巣は鼠蹊(そけい)部にあり,陰囊がない。暁新世に,髁節(かせつ)類からアフリカで分かれ出たものと推定され,アフリカとマダガスカルに1科(ツチブタ科)4属が知られ,一時は西アジア,ヨーロッパまで分布を広げたが,現在はアフリカに1属1種,ツチブタOrycteropus afer(イラスト)を見るだけである。【今泉 吉典】。…

【管歯類】より

…子宮は重複性,精巣は鼠蹊(そけい)部にあり,陰囊がない。暁新世に,髁節(かせつ)類からアフリカで分かれ出たものと推定され,アフリカとマダガスカルに1科(ツチブタ科)4属が知られ,一時は西アジア,ヨーロッパまで分布を広げたが,現在はアフリカに1属1種,ツチブタOrycteropus afer(イラスト)を見るだけである。【今泉 吉典】。…

※「ツチブタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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