デジタル大辞泉 「野火」の意味・読み・例文・類語
の‐び【野火】
2 野山の不審火。また、野の火事。
「―
[補説]書名別項。→野火
[類語]火・
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
大岡昇平の戦争文学。前半の部分がまず『文体』の1948年(昭和23)12月号と49年7月号に発表され、それに手を加えて『展望』の51年1~8月号に連載。52年創元社刊。作者がレイテ島の捕虜生活中に捕虜仲間から聞いた体験談に基づいて状況を設定し、そのなかに『捉(つか)まるまで』の主人公と同じような自意識の強い病兵を投じ、日本軍から追放された孤独な極限状況のなかで人肉食や神の問題に直面させてみた実験小説。虚無の眼(め)を根底とする想像力によって、死の予感を抱きつつ熱帯の自然に陶酔する姿や、その自然の背後に潜む敵意におびえながら、執拗(しつよう)に自己点検を繰り返す意識の緊張を描きだした、緊迫感の高い戦後文学史上の秀作。
[亀井秀雄]
『『野火』(旺文社文庫・角川文庫・講談社文庫・集英社文庫・新潮文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…火事とは,建造物,山林・原野,輸送用機器等が放火を含め意図せざる原因によって燃え,自力で拡大していく状態にあるものをいうが,人間にとって有用なものが被災するという点からは,火災と呼ぶ。《消防白書》(消防庁編)は,火災を燃焼対象物により,建物火災,林野火災,車両火災,船舶火災,航空機火災およびその他火災(空地・土手などの枯草,看板などの火災)に分類する。このうち近年の出火件数では建物火災が毎年60%以上を占めている。…
…1944年一兵士として応召出征,45年1月フィリピン戦線でアメリカ軍の捕虜となった。48年この経験を書いた短編《俘虜記(ふりよき)》(合本《俘虜記》では《捉(つか)まるまで》と改題)で文壇に登場,次いで禁欲的な恋愛小説《武蔵野夫人》(1950),敗軍下の戦場での神と人肉食の問題を取りあげた《野火》(1951)を発表,戦後文学を代表する作家の一人となった。その後は評伝《朝の歌――中原中也伝》(1958),《富永太郎の手紙》(1958‐60)で自己の青春に強い影響を及ぼした詩人たちの生涯を確かめ,また《花影》(1958‐59)で無垢な女性の死を描くなど,孤独な人間の生を追求していたが,60年代に入って敗軍の将を主人公とした歴史小説《天誅組》(1963‐64),《将門記》(1965)を発表,続いて大作《レイテ戦記》(1971)を完成した。…
※「野火」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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