テングギンザメ(読み)てんぐぎんざめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テングギンザメ」の意味・わかりやすい解説

テングギンザメ
てんぐぎんざめ / 天狗銀鮫

軟骨魚綱ギンザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。テングギンザメ科Rhinochimaeridae(英名longnose chimaeras)は、その名のとおり吻(ふん)が剣状に突き出すのが特徴で、テングギンザメ属Rhinochimaera、アズマギンザメ属HarriottaNeoharriottaの3属が知られている。そのうち、テングギンザメ属は口が目より明らかに前にあること、尾びれ下葉上葉よりかなり高いこと、臀(しり)びれがないことなどで特徴づけられる。テングギンザメ属には3種が知られ、日本近海のテングギンザメR. pacificaは体が薄い茶灰色であること、クロテングギンザメR. africanaは体色が黒褐色であることでそれぞれ区別できる。大西洋にはニシテングギンザメR. atlanticaが知られている。

 種としてのテングギンザメ(英名Pacific knifenose chimaera)は330~1490メートルの大陸斜面付近にすみ、トロール網で漁獲される。生殖方法は卵生で、平たい楕円(だえん)形の卵を産む。日本近海ではオホーツク海や北海道以南の太平洋から知られているが、東シナ海南シナ海オーストラリア南部、ニュージーランド、さらに東部太平洋のペルーに分布する。国際自然保護連合IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年8月時点)。

[仲谷一宏 2021年9月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「テングギンザメ」の意味・わかりやすい解説

テングギンザメ
long-snouted chimaera
Rhinochimaera pacifica

全頭亜綱ギンザメ目テングギンザメ科の海産魚。その名のとおり吻(ふん)が著しく突出する。英名も長い吻に基づいている。相模灘,銚子沖,三陸沖,釧路沖の深海から得られているほか,ニュージーランドやペルー沖にも分布する。大西洋産のR.atlanticaでは尾びれの背縁にある棘状(きよくじよう)突起が25~30であるのに対し,本種では34~69と多いことで両種は区別される。水深500m以深の大陸斜面に生息しており,もっとも深いところで得られたものは水深1110mの地点。背びれの前縁に長いとげがあり,尾部下葉部は長いが,糸状部は短いなどの特徴がある。全長130cmに達する。剣状の吻の両側に皮質状の小さなとげが並ばないこと,各歯板の切縁が滑らかなことなどが同じテングギンザメ科RhinochimaeridaeのアズマギンザメHarriotta raleighanaとの区別点。また,稀種(きしゆ)であるため,ほとんど生態はわかっていない。卵生で卵殻は長卵形,長さは約26cmに達する。底引網で漁獲されるが,ほとんど利用されない。
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小学館の図鑑NEO[新版] 魚 「テングギンザメ」の解説

テングギンザメ
学名:Rhinochimaera pacifica

種名 / テングギンザメ
目名科名 / ギンザメ目|テングギンザメ科
解説 / 長いけんのような吻はやわらかいです。大陸斜面上部の海底近くにすみます。
全長 / 130cm
分布 / 日本の太平洋側/オホーツク海南部、東シナ海、オーストラリア、ニュージーランド、ペルー
危険 / とげに毒

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テングギンザメ」の意味・わかりやすい解説

テングギンザメ
Rhinochimaera pacifica

ギンザメ目テングギンザメ科の海水魚。全長 1.3m内外。体は延長側扁する。吻は著しく突き出し,剣状。背鰭にとげがある。尾鰭は上葉は痕跡的であるが,下葉はよく発達する。尻鰭はない。体は褐灰色で,後方に3条の青白色縦線がある。卵生。深海性。相模湾に分布する。

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