改訂新版 世界大百科事典 「ディオメデス」の意味・わかりやすい解説
ディオメデス
Diomēdēs
(1)ギリシア伝説で,トロイア遠征のギリシア軍中,アキレウスに次ぐ勇将。テュデウスTydeusの子。ホメロスの《イーリアス》によれば,アルゴス兵を満載した軍船80隻を率いて出陣した彼は,アキレウスの一時的戦線離脱の間,ギリシア軍の大黒柱として奮戦,トロイア方の多数の将兵を討ったほか,女神アテナの助けを得て,軍神アレス,女神アフロディテにまで手傷を負わせた。ホメロス以後の伝承でも,彼はオデュッセウスと協力し,弓の名手フィロクテテスをレムノス島からトロイアの戦地に連行したほか,城内のアテナ神殿からトロイアの命運がかかったパラディオン(アテナ女神像)を盗み出すなど,ギリシア軍の勝利に多大の貢献をなしたとされている。
(2)ギリシア伝説のトラキア王。4頭の持ち馬に人肉を与えて飼育していたが,英雄ヘラクレスに殺され,馬を奪われた。一説では,みずからもその馬の餌食にされたという。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報