日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディオメデス」の意味・わかりやすい解説
ディオメデス
でぃおめです
Diomedes
(1)ギリシア神話の英雄。父はテバイ(テーベ)攻めの七将で有名なティデウスで、彼も第二次のいわゆるエピゴノイのテバイ遠征に参加している。トロヤ戦争では知勇兼備の将として活躍し、アキレウスに次ぐ勇士とされた。トロヤの英雄アイネイアスを討ち取ろうとするところを女神アフロディテに妨げられると、神といえども容赦せずに傷を負わせ、また戦いの神アレスさえも槍(やり)でその腹を突き破られて絶叫とともに逃げ去った。反面、トロヤ軍の将グラウコスと一戦を交えようとしたとき、互いに祖父同士が親しい間柄であったことを知ると、両人は盟友の誓いを固めて記念に鎧(よろい)を交換し別れた。彼はオデュッセウスと行動する場合が多い。トロヤ陣営のレソスとドロンを討ち、レムノス島へフィロクテテスを迎えに行き、またトロヤから神像パラディオンを盗み出した。(2)ギリシア神話のトラキアの王。父はアレスで、好戦的な蛮族ビストネスを支配していた。彼は人肉で飼育する四頭の凶悪な馬を飼っていたが、この馬を連れてくるように命じられたヘラクレスにより殺された。あるいはヘラクレスが、この馬に食わせたともいい、これはヘラクレスの第八番目の功業である。
[伊藤照夫]