大極柱とも書く。構造上もっとも重要な柱で、他の柱に比しとくに太い材料を用いる。その点では、神社建築の「真の御柱(みはしら)」にも匹敵する。通常は土間と床上部分との境の中央の柱をいうが、田の字型間取りの場合、中央の交差点に建つ柱をいうこともある。柱の径の大小によらず、その位置の柱をさすこともある。小屋組みの牛梁(うしばり)を受ける土間の中央の柱が牛柱(うしばしら)であるが、大黒柱に相対するので、これを大黒ニラミ、小黒(しょうこく)柱、えびす柱、ニワ大黒、下大黒、ウス柱などともよぶ。ウス柱は牛柱の転じたものかもしれないが、その柱の根元に臼(うす)を置いている地方もある。大黒柱は牛梁を割って、その上の棟木にまで達せしめていることもある。この方式を家の妻側に用いた場合、これをウダツ柱とか棟持(むなもち)柱などとよぶ。家の柱は軸組み構造の場合重要なものであるから、神格化される。そのもっとも特色のあるのは諏訪(すわ)神社の御柱(おんばしら)の神事からもうかがい知ることができる。家を新築した際、家移(やうつ)り粥(がゆ)をまず大黒柱にかける習俗も、そのことを証するもので、柱を家そのものと見立てた例といえよう。
藩政時代には、民家に使用する木材の材種に制限があり、針葉樹の使用は許されず、広葉樹を用いざるをえなかった。大黒柱にもケヤキ、ナラ、クリ、カシ、サクラなどが使用された。もちろん力も強いが、材質が堅いから鉋(かんな)はかけにくい。槍(やり)鉋で、はつる(そぎ落とす)ようにして削る。したがって削り目が残る。世にこれを手斧(ちょうな)削りといい、鉋の発明される以前の仕上げとし、その年代の古さの証(あかし)とするが、鉋はあっても刃の打ち方が未熟であるため、堅木が削れなかったためである。
[竹内芳太郎]
日本の農家や町家の土間と居室部分の境目の中央にあって,他の柱より特に太い柱を指す。大極柱とも書き,また地方により,なか柱,ゆるい柱,亭主柱などと呼ばれる。普通,一辺が30cm前後の正方形断面で,ケヤキ材を使うものが多いが,一辺60cm以上の太いものもある。家のなかで大黒柱1本だけを特に太くするのは江戸時代中期以降の農家や町家に多く見られ,より古い時期には,太い梁の両端を支えるための太い柱が土間の周囲などに何本も使われた。これらを,小黒,えびす柱,荒神柱,よめご柱などと呼ぶ地方がある。大黒柱だけを特に太くするのは,囲炉裏のある居間の周囲の鴨居(かもい)に太い差(さし)鴨居を使うようになり,差鴨居を支える必要から起こったのであるが,太い大黒柱や差鴨居が家格や富を象徴したことが,その傾向をいっそう助長した。大黒柱に神を祭る習俗は見られないが,その根元に銅銭が挟まれている例がまれにある。
執筆者:大河 直躬
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…使用する場所によって名称が異なり,外回りの側(かわ)柱と,それより1間内側の入側(いりかわ)柱,身舎(母屋)(もや)・庇(ひさし)の別があるときはそれぞれ身舎(母屋)柱・庇柱,そのほか裳階(もこし)柱,向拝柱,門や塀における本柱と控柱などといい,同じ側柱でも隅柱とそれ以外の平柱を区別する。さらに建物の種類により,仏堂では外陣柱と内陣柱,仏壇後ろの来迎柱,塔では入側柱に相当する四天柱,相輪を支持する心柱(檫),書院や民家における床の間の床柱,民家の中心的位置にある大黒柱,さらに特殊なものとして神社本殿で,神明造の妻側に離れて立つ棟持(むなもち)柱や,大社造の中心にあるうず柱などの名称がある。 断面の形状をみると,円柱と方柱のほか六角柱,八角柱,長方形の鏡柱や片蓋(かたぶた)柱,角に自然の丸みを残した面皮(めんかわ)柱などがある。…
…その後草刈り,穴掘りなどをしたうえ,大物忌(おおものいみ)という内人が忌柱を立て,その後に四方の柱が立てられる。民間では家屋建築に際して初めて立てる柱を大黒柱,大極柱あるいは立初柱(たてそめはしら)ともいう。近世の匠家故実によれば立柱の式は四季に応じて次第の順がある。…
※「大黒柱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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