演奏機構や発音に電気の力を利用する楽器の総称。4種に大別される。(1)従来の機械的な振動をする発音源に電気的なしかけを応用しているもの。演奏機構面のみに応用している例として,送風用モーター,ストップ機構,ストップ配合の記憶装置などに電力を用いているパイプ・オルガンが代表的である。音に変化を与えるため補助的に応用している例としては,音板の下の共鳴パイプにモーターで回転するファンを取り付けてトレモロ効果を得ているビブラフォンがあげられる。振動を電気振動に変換して電子回路で音色を合成してスピーカーから発音させるものとしては,スチール弦の振動を電磁的に電気振動に変換しているエレクトリック・ギター,弦を打つ音をマイクで電気振動に変えたり,金属片を打った振動を静電的に電気振動に変える電気ピアノなどがある。(2)機械的回転を電気振動に変換しているもの。トーンホイールによる発電機を用い,電子回路で音色を合成しているハモンド・オルガンが代表的であるが現在は製造を中止している。(3)発振も電子回路で行い,種々の効果を電子回路で付加しているもの。他の電気楽器と区別して〈電子楽器〉とも呼ばれる。ロシアの物理学者テレミンが発明した〈テレミン〉(1920),〈オンド・マルトノ〉(1928)が古い。パイプ・オルガンを見本として出発し,現在ではまったく独自の楽器となって急速に普及している電子オルガンの類や,多様な音が自由に合成できるように種々の機能回路を網羅したミュージック・シンセサイザー(シンセサイザー)の類があげられる。(4)自動楽器に応用しているもの。モーターで風圧をつくり,穿孔テープによって演奏機構が風圧で動かされる方式の自動楽器が20世紀初め多く造られた。ピアノ,バイオリン,オルガンなどに例が多い。最近では磁気テープに入られた情報でソレノイドコイルを制御して発音させるピアノが出現している。演奏によって入力される記録情報だけでなく,コンピューターで自動演奏させることができるものも出現している。
→電子楽器
執筆者:白砂 昭一
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