ヒップホップ(英語表記)hip-hop

翻訳|hip-hop

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒップホップ」の意味・わかりやすい解説

ヒップホップ
hip-hop

1980年代から 1990年代にかけて人気を博した文化の総称であり,リズミカルで韻を踏んだ語りが特徴的なラップのバックミュージックでもある。ラップと同義語にとらえられがちだが,カルチャームーブメントとしてのヒップホップは四つの要素が複雑に組み合わさっている。四つの要素とは (1) DJ(deejayingあるいはターンテーブリング turntabling),(2) ラップ(rappingあるいは MC,ライミング rhyming),(3) グラフィティ・ペインティング(graffiti painting,あるいは graf,writing,(4) ブレイキン(ブレイクダンス break dancingあるいは B-boying)である。ヒップホップは 1970年代後半,経済的苦境にあったアフリカ系アメリカ人が多く住むニューヨークのサウスブロンクス地区(→ブロンクス)で生まれた。いわゆる「社会の周縁」から発祥しており,この文化の詳しい起源は不明である。
DJ,ラップおよびダンスは結びついて今日まで発展をみている。DJの草分けはジャマイカ出身の移民であるクール・ハーク(本名クライブ・キャンベル)で,1973年当時 18歳だった彼はパーティ会場に大きな音響設備を持ち込み 2台のターンテーブルを用い,古いレコードの打楽器演奏部分とダンスソングを組み合わせて,盛り上がったままとぎれることのない音楽をつくりだした。初期の DJとしてはこのほか,アフリカ・バンバータ,「スクラッチ」と呼ばれる技術を開発・普及したといわれるグランド・ウィザード・セオドアとグランドマスター・フラッシュがいる。彼らの音楽に合わせて,ダンサーたちは重力に抗うようなヘッドスピンやバックスピンといったアクロバティックな技を駆使したブレイクダンスをつくり上げた。また,DJのかたわらで曲に合わせてリズミカルに語りかける MCの役割も生まれた。彼らが語る「ラップ」が世界的に知られるきっかけとなったのが,シュガーヒル・ギャングが 1979年に発表した楽曲『ラッパーズ・ディライト』Rapper's Delightである。この曲のヒットにより,ラップミュージックはポピュラー音楽の新たなジャンルにその名を刻むことになった。初期のラップミュージシャンにはグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイブカーティス・ブロウ,コールド・クラッシュ・ブラザーズがいる。1980年代半ば以降,「ニュースクール」と呼ばれる新たなヒップホップの担い手が台頭し,中流階級出身のアフリカ系三人組ラン-DMCや,LL・クール・J,白人三人組のビースティ・ボーイズ,そしてパブリック・エナミーがファン層を広げた。

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