トガ(その他表記)toga

翻訳|toga

改訂新版 世界大百科事典 「トガ」の意味・わかりやすい解説

トガ
toga

古代ローマ市民がトゥニカの上に着用した平時正装用上着。弓形に裁った毛織地の直辺(5~6m)を折り畳み,約3分の1を左肩から前に垂らし,残りは背中から右腋下を通して再び左肩から背に垂らして着装する。帝政期には右腋下ではなく,右肩越しに布を回し右腕を覆い隠す着装方式が多くなった。女性も初期にはトガを着たが,後には正装(ストラstola)着用を許されない売春婦等だけが着た。成年男子用の無地・無染色のトガ・ウィリリスtoga virilis,高級公職者および未成年者用の緋色の縁付きトガ・プラtoga praetexta,官職立候補者用の漂白したトガ・カンディダtoga candida,喪服用の濃灰色のトガ・プラtoga pulla,凱旋将軍が着る緋一色に金色刺繡を施したトガ・ピクタtoga picta等の種類がある。トガは帝政後期に至るまで公式行事での正装であったが,重たくてひだ取りも難しかったので,しだいにギリシア風上着(パリウムpallium)が好まれるようになった。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トガ」の意味・わかりやすい解説

トガ
toga

トーガともいう。古代ローマ人が一般に着用した巻衣形式の外衣。長径が身長の約3倍ある半月形の布地を,技巧を凝らして袈裟掛けに着用したもの。起源は不明であるが,類型は前 5000年頃のエトルリアにみられ,古代ギリシアのヒマティオン,また今日のインドのサリーとの類型も指摘されている。階級役職によって色や装飾に区別があった。代表的種別には,皇帝や将軍の盛装用としての,赤紫地に金糸の刺繍を施したトガ・ピクタ,礼祭用の紫のトガ・トラベア,官職者の公服である白地に赤紫の線状の縁飾りを施したトガ・プレテクスタ,官吏候補者用の白いトガ・カンディダ,一般男性用の未ざらしのトガ・プーラ,喪服用の黒や茶のトガ・プッラなどがあった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「トガ」の意味・わかりやすい解説

トガ

古代ローマ市民がトゥニカの上にまとった平常着。男女とも着用したが,のち男子服となった。初期には弓形あるいは半円形身丈の3倍ほどの布が用いられたが,やがて長径6m,幅2mの長楕円形になり,その後は次第に小型化し,7―8世紀ごろには見られなくなった。着用者の身分に応じて,色,装飾などが異なり,多くの種類があった。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トガ」の意味・わかりやすい解説

トガ
とが

ツガ

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のトガの言及

【ツガ(栂)】より

…トガともいう(イラスト)。暖地の尾根などに生えるマツ科の常緑高木で,樹冠に密につく細かい枝葉が光を反射し,遠望すると淡緑色に見える。…

【ローマ】より

…オスティアの遺跡が当時のインスラのようすをよく伝えているが,古代ローマには豪壮な宮殿や公共建築物,瀟洒(しようしや)な個人邸宅と並んで,このようなインスラがひしめき合っていたのである。
[衣服]
 古代ローマの男性は膝丈のトゥニカの上にトガを着用したが,トガは重いうえにひだ取りも難しかったため嫌われるようになり,皇帝たちは公式行事の際のトガ着用を命じる勅令を出さざるをえなかったほどで,トガに代わってパリウムpalliumというギリシア風外衣が好まれるようになった。また,袖なし・貫頭衣型の羊毛製外套(パエヌラpaenula)も旅行用・雨天用として好まれた。…

※「トガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android