日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゲハナスズキ」の意味・わかりやすい解説
トゲハナスズキ
とげはなすずき / 棘花鱸
spotlined bass
[学] Liopropoma japonicum
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハタ亜科ハナスズキ族に属する海水魚。小笠原(おがさわら)諸島、相模湾(さがみわん)以南の太平洋沿岸、東シナ海、朝鮮半島南岸、台湾南部などに分布する。体は細長く、背びれは8棘(きょく)13~14軟条、臀(しり)びれは3棘10~11軟条、主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の後下端に下向きの棘があり、腹びれと体は膜でつながらないことが特徴のハタ類で、以前はハナスズキ亜科に入れられていた。体は側扁(そくへん)し、中央部付近でもっとも高い。尾柄(びへい)は高い。両鼻孔は広く離れ、前鼻孔は吻端(ふんたん)近くに位置する。口は大きく、下顎は上顎を越えて突出する。主上顎骨の後縁は目の後縁下に達する。上下両顎には絨毛(じゅうもう)状の幅広い歯帯があり、犬歯がない。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に絨毛状歯帯があり、鋤骨の歯帯はV字状。主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)の上部に1本の三角形の棘がある。前鰓蓋骨縁辺は鋸歯(きょし)状で丸みを帯びる。側線は背びれの下方で緩く大きく湾曲する。鱗(うろこ)は大きく、櫛鱗(しつりん)。側線有孔鱗数は46~51枚。背びれは胸びれの基部よりも後方から始まり、棘部は浅くて広いくぼみで軟条部とつながる。背びれ第4棘は最長で、後方に向かって短くなる。臀びれは第3棘が細長くて最長。尾びれはわずかに湾入し、下葉は上葉よりやや長い。体色は黄紅色で、吻端から目を横切り、尾柄の背部に達する幅広い朱色の縦帯がある。主鰓蓋骨の上部から胸びれの後端上方までの体側に小暗色点が1列に並ぶ。各ひれは淡紅色~紅色。尾びれの後部の背縁と腹縁は乳白色。尾びれの基底部の側線の上部に朱色の斑紋(はんもん)がある。水深40~220メートルの沿岸の岩礁の砂底域に生息し、釣り、延縄(はえなわ)、底引網などで混獲されるが、漁獲量は少ない。体長25センチメートルあまりに達する。
[尼岡邦夫 2022年10月20日]