とって（読み）トッテ

デジタル大辞泉

とって［格助・接助］

《助詞「とて」の促音添加。近世語》
［格助］句または文を受けて、引用を表す。…と言って。…と思って。
「年玉にいい―、おらが所ぢゃあ、いかいこと買ったよ」〈滑・浮世風呂・二〉
［接助］活用語の終止形、動詞の命令形、禁止の助詞「な」に付く。
１ 仮定の逆接条件を表す。たとえ…しても。…ても。
「相手がいい―わりい―、どこに仕打ちがあるものか」〈滑・八笑人・三〉
２ 上の確定した事柄を仮定のこととして表す。…からといっても。
「いかに江戸がひろい―」〈滑・続々膝栗毛・二〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

とっ‐て

1. ( 「とて」が促音化した語 )
2. [ 1 ] 〘 格助詞 〙 一応終止した文を受け、「…と言って」「…と思って」の意を表わす。
   1. [初出の実例]「いっそいそいでくるとって、ついあそこでころびやした」(出典：洒落本・妓者呼子鳥（1777）四)
   2. 「そして直(ね)が安いから、年玉に能迚(トッテ)、おらが所じゃア、いかいこと買たよ」(出典：滑稽本・浮世風呂（1809‐13）二)
3. [ 2 ] 〘 接続助詞 〙
   1. ① 仮定の逆接条件を表わす。たとえ…しても。
      1. [初出の実例]「貴さまたちにいってきかせたとって、馬の耳に風だろふが」(出典：滑稽本・東海道中膝栗毛（1802‐09）四)
   2. ② 既定の事柄を仮定的に表現する。…からといっても。
      1. [初出の実例]「いかにした手なもんだとって、あんまりな事を云なさる」(出典：洒落本・真女意題（1781）)

出典　精選版 日本国語大辞典