トビカズラ(英語表記)Mucuna sempervirens Hemsl.

改訂新版 世界大百科事典 「トビカズラ」の意味・わかりやすい解説

トビカズラ (飛蔓)
Mucuna sempervirens Hemsl.

国の特別天然記念物で,日本では熊本県山鹿市の旧菊鹿町相良にただ1本だけ生育しているマメ科のつる性木本。アイラトビカズラともいう。大型の常緑木本。葉は互生し,3小葉をつける。小葉は革質,卵状楕円形で長さ7~15cm,幅4~8cm。初夏に咲く花は穂状に集まってつき,暗紫色で長さ7~8.5cm。果実は細長く,長さ40~60cm,幅約4cmの豆果,果皮は木質で,一面赤褐色の毛が生えている。7~10個の種子を入れる。熊本県と,中国大陸に分布。日本には中国から帰化したと推定されている。

 トビカズラによく似たウジルカンダM.macrocarpa Wall.は九州南部,沖縄に自生し,中国,東南アジア,インド,ヒマラヤに分布する。花は長さ5.5~7cmで,花弁の一部は灰緑色である。どちらも中国では婦人病などに対する民間薬とされる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビカズラ」の意味・わかりやすい解説

トビカズラ
とびかずら / 飛蔓
[学] Mucuna sempervirens Hemsl.

マメ科(APG分類:マメ科)の壮大な常緑つる性木本。幹は直径30センチにも達する。葉は3小葉からなる。小葉は長楕円(ちょうだえん)形、革質で光沢があり長さ7~15センチメートル、先端は急に細くとがる。5月ころ、古い枝から総状花序を垂れ下げ、長さ6~8センチメートルで暗紫色の蝶形花(ちょうけいか)を多数つける。別名アイラトビカズラ。日本では熊本県山鹿市相良(あいら)の丘陵の崖(がけ)に生えるものが、特別天然記念物に指定されている。これは同種が野生している中国中部から持ち込まれたものではないかと推定されている。

[立石庸一 2019年10月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「トビカズラ」の意味・わかりやすい解説

トビカズラ

アイラトビカズラとも。マメ科の大型のつる性常緑木本(もくほん)。葉は革質で互生し,長さ約10cmの3小葉からなる。花は長さ約8cmの褐紫色の蝶(ちょう)形花で初夏に咲く。豆果は線形で長さ40〜60cm。中国に分布するが日本にも熊本県菊鹿町(現・山鹿市)相良に1本だけが生え,特別天然記念物に指定。九州南部以南に分布する近縁のウジルカンダとともに,中国では婦人薬にされる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android