日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トランスファー・プライシング
とらんすふぁーぷらいしんぐ
transfer pricing
多国籍企業が国境を越えて行う親会社と子会社、あるいは子会社相互間の部品、完成品、サービスなどの取引は、国際市場を経由しないで企業グループ内の取引(企業内貿易)として扱うことが多い。これら企業グループ内の取引は、市場価格と異なった多国籍企業の政策に基づく価格をつけることができる。このような多国籍企業内部で政策的に決定される価格操作をトランスファー・プライシングといい、振替(または移転)価格政策ともよばれる。トランスファー・プライシングは次のような目的で利用される。〔1〕各国の税率の差を利用して、とくにきわめて税率の低いタックス・ヘイブンを利用して、企業グループ全体として租税を最小限にする。〔2〕子会社の利潤の送金に対する制限を回避する。〔3〕垂直的に統合された企業は、競争がもっとも少ない生産段階に利潤を集中し、競争の激しい段階では利潤を少なくするようにして、競争者に対し有利な立場にたつ。〔4〕トランスファー・プライシングを利用して研究開発費、中央管理費を各製品に適宜に割り当てる。このような多国籍企業のトランスファー・プライシングを利用した租税回避に対して、各国政府は基準価格制度を設けるなどして対抗している。
[相原 光]