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移転価格税制 いてんかかくぜいせいtransfer price tax system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

移転価格税制
いてんかかくぜいせい
transfer price tax system

内国法人の海外系列会社などとの取引価格の操作に対し,第三者との取引価格と照合して所得計算し,これに基づいて課税する税制。国によって法人税率に格差がある場合,税率が低い国にある子会社への販売価格を低くすれば,親会社の所得が低くなり税額も少なくなるので,企業グループ全体では税負担を軽減させることができる。移転価格税制はこうした取引価格が不当と判断された場合に,関連企業ではない第三者との取引価格を移転させて税額を算出するものである。欧米諸国で実施されており,日本でも企業の国際化に伴って金融やサービス取引をも対象とした税制が 1986年に導入された。租税条約の相手国が移転価格課税を行なった場合には,租税条約に基づく権限のある当局 (日本では国税庁) 間の合意により,日本に所在する関連企業の所得を減額することができる。

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知恵蔵の解説

移転価格税制

企業が、実質的な支配下にある海外の関連企業との取引に際して、恣意的な価格決定を行い、国内の課税所得が減少した場合には、第三者との間で成立するであろう、通常の価格(独立企業間価格)で取引が行われたものとみなして課税する仕組み。各国とも、企業の多国籍化に伴う内外関連企業間での国際取引の増加や、取引形態の複雑化等を背景に、恣意的な価格操作による非正常な所得移動を防止するため、国際的な課税ルールに基づいた移転価格税制が必要となり、米、英、独、仏、中国などでこの税制が実施されている。日本でも、1986年度から導入された。最近では、本社・海外子会社の両国税務当局間で、移転価格の算定方法などについて事前に確認を得るAPA(advance pricing agreement :事前確認制度)を採用する企業も出ている。

(永田雅啓 埼玉大学教授 / 松尾寛 (株)三井物産戦略研究所副所長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

移転価格税制

企業が国外の関連企業との取引を通じ、法人所得を意図的に海外に流出(移転)させるのを防ぐ制度。企業が海外の関連会社から受け取る価格を低く設定し、本来は日本国内で課税されるはずの所得を減少させた場合、通常の取引価格で取引されたとみなして課税し直す。移転された所得が海外で課税されている場合、租税条約に基づく二国間協議で合意できれば海外の関連会社は還付を受けられる。

(2006-07-01 朝日新聞 朝刊 1総合)

移転価格税制

国内企業が海外の関連企業との取引を通じ、法人所得を意図的に海外に流出させるのを防ぐ制度。海外の関連企業との取引で、取引価格を低く抑えるなどして、国内で課税されるはずの所得を圧縮した場合、通常の取引価格で取引したとみなし、課税し直す。最近では武田薬品工業デンソーがこの制度によって申告漏れを指摘された。武田のケースでは国税局が同社の異議を認め、課税の一部を取り消した。

(2012-05-09 朝日新聞 朝刊 1社会)

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デジタル大辞泉の解説

いてんかかく‐ぜいせい【移転価格税制】

多国籍企業などの移転価格が、通常の取引価格(独立企業間価格)と異なる場合に、通常の取引価格に基づいて所得金額を算出し、課税すること。移転価格が見直されると、取引を行った双方の利益額が変化して、一方の税額が増加し、他方は減少する。そのため、両国の税務当局が協議を行って調整し、二重課税を避ける必要がある。TP(transfer pricing taxation)。

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百科事典マイペディアの解説

移転価格税制【いてんかかくぜいせい】

企業間取引の中で親会社と海外子会社などの関連企業間の国際取引について,取引価格に不正のある場合,税務当局が適正と判断した価格に基づいて所得を計算,法人税の課税額を決める制度。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

移転価格税制
いてんかかくぜいせい
transfer pricing taxation

多国籍企業などが税率の低い国へ恣意的に利益(所得)を移すことによる課税逃れを防ぐ税制。もともとアメリカ合衆国が州間取引に適用していたが、企業の多国籍化が進んだ1960年後半以降、国境を越える取引価格(移転価格)を操作する節税行為が広がったため、国際取引にも適用されるようになった。1980年代には、カナダ、イギリス、旧西ドイツなどの先進国に広がり、日本でも1986年(昭和61)の税制改正で採用された。移転価格の適正水準を算定する国際ルールについては、経済協力開発機構(OECD)が定めている。最近では、アメリカに本社を置く多国籍企業を中心に、移転価格操作が問題化している。
 節税行為としては、高税率の国にあるA社が低税率の国にある同一グループ企業のB社との間で、(1)商品価格を通常よりも低く設定して輸出する、(2)商品価格を通常よりも高く設定して輸入する、(3)特許権や商標権などの知的財産を安い価格で移す、などの操作をする。これにより低税率国にあるB社へ所得を移転・集中させ、企業グループ全体の納税額を抑制する手法がとられることが多い。税務当局はグループ企業内の移転価格と通常の取引価格を比較し、移転価格が適切かどうかをチェックする。不当な取引で課税対象となる所得が恣意的に抑えられていると判断した場合には、追徴課税する。OECDは2014年に企業グループ内の国境を越えた取引について、年1回、税務当局へ報告するよう義務づけるルールを定めた。
 移転価格税制の適用により、2か国から課税される二重課税が発生する場合がある。その際には、租税条約に基づいて2か国の税務当局同士が協議して課税額を調整する仕組みがある。また巨額の追徴課税などのリスクを避けるため、海外関係会社との取引価格(移転価格)の妥当性について、事前に税務当局と協議し、適正な価格であることを確認する「事前確認」も増えている。[矢野 武]

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