トリスタンとイズー(その他表記)Tristan et Iseult; Tristan und Isolde

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリスタンとイズー」の意味・わかりやすい解説

トリスタンとイズー
Tristan et Iseult; Tristan und Isolde

ヨーロッパ中世の創造になる「情熱恋愛の神話」ケルト民族の伝承段階から文学作品 (→ロマンス ) として初めて形態をとったのは 12世紀中頃,フランス語による (散逸) 。勇敢な騎士トリスタンは伯父のコーンウォール王マルクの妃になるべきアイルランド王女イズー (イゾルデ) を迎えに行くが,誤って飲んだ秘薬の魔力で二人はひかれあい,多くの試練や悔恨を退けて愛を貫き,苦しみつつ,死ぬまで貞節を守りとおす。 12世紀末に散逸のロマンスによってか,あるいは別系の作2篇が書かれる (フランス語) 。アーサー王伝説と結びつけられて,吟遊詩人ベルールによって広く流布された作とトマによって一層洗練された作とがある。 13世紀,トマの強い影響下に宮廷風恋愛の理念化を進めたのはドイツのゴットフリート・フォン・シュトラスブルクである。『トリスタンとイズー』は中世末まで各国語に書き改められ,ヨーロッパ共有の文化となった。この素材はその後もヨーロッパ芸術にとっての宝庫であり,ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』 (1865) はその一例である。前奏曲の冒頭と終わりにみられる特異な和音が,半音階的な変化音を多く含むことから「トリスタン和音」という名称がつけられた。現代では,J.ベディエによって修復されたテキストがよく知られている。

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