日本大百科全書(ニッポニカ) 「トマ」の意味・わかりやすい解説
トマ(Charles Louis Ambroise Thomas)
とま
Charles Louis Ambroise Thomas
(1811―1896)
フランスの作曲家。メス生まれ。パリ音楽院でカルクブレンナー(ピアノ)、ルシュール(作曲)らに師事、1832年にローマ大賞を受けるなど神童ぶりを発揮した。おもにパリのオペラ・コミック座を舞台に『地方行政官』(1849初演)、『真夏の夜の夢』(1850)を皮切りにオペラで成功を収めた。とくにゲーテの『ウィルヘルム・マイスター』に基づく『ミニョン』(1866)は劇中のアリア「君よ知るや南の国」とともに有名になった。ほかにオペラ『フランチェスカ・ダ・リミニ』(1882)など。52年からパリ音楽院教授、71年から92年まで同校の院長を務め、後進の育成に寄与した。パリに没。
[美山良夫]
トマ(Henri Thomas)
とま
Henri Thomas
(1912―1993)
フランスの詩人、小説家。ボージュ地方アングルモンに生まれる。詩人としてはベルレーヌの流れをくみ、ささいな日常事を独特な声の抑揚のなかに転置して詩的世界を形成している。また小説家としても、日常の現実のなかに突如としてひらめく楽園の幻を、ストーリー形式に定着させ、その詩的瞬間を結晶させることに鋭意専心した。代表的な詩集として『生命のしるし』(1944)、『不在の世界』(1947)などがあり、代表的な小説として『ロンドンの夜』(1956)、『ジョン・パーキンズ』(1960)、『岬』(1961)などがある。
[若林 真]
『若林真訳『ロンドンの夜』(1971・白水社)』▽『若林真訳『ジョン・パーキンズ』(1965・新潮社)』▽『若林真・永井旦訳『岬・世捨て人』(1964・白水社)』