改訂新版 世界大百科事典 「トリンギット族」の意味・わかりやすい解説
トリンギット族 (トリンギットぞく)
Tlingit
北アメリカ北西海岸領域の北部,現在のアメリカ合衆国アラスカ州南東部に居住するアメリカ・インディアンの一族。人口約9500(1980)。アサバスカ(ナ・デネ)系言語を話す。トリンギットとは〈人々〉の意味。生活文化は海の食料資源と海岸に迫る森林によって特徴づけられる。伝統的な食料獲得方法はサケ,オヒョウなどの漁労,アザラシ類の狩猟が主で,陸獣狩猟と野生植物の採集も行われた。木工,織物の技術にすぐれ,カヌー,仮面,木箱,供食用容器などに彩色絵画,彫刻がほどこされた。ヤギの毛を材料とするチルカット・ブランケット,杉の根の樹皮を素材とする籠細工も有名。文様にはおもに紋章とそれに関連する動植物が使用された。社会は母系半族組織に特徴づけられ,そのトーテム(祖先)はオオガラスとオオカミ(またはワシ)である。社会の階層化が進み,貴族,平民,奴隷に分かれ,奴隷を入手するための戦闘も行われた。シャーマンも存在した。
執筆者:小谷 凱宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報