日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドブリュー」の意味・わかりやすい解説
ドブリュー
どぶりゅー
Gerard Debreu
(1921―2004)
アメリカの経済学者。フランスのカレーに生まれる。ドイツ占領下のパリにおいて、エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)で数学を学び1944年卒業、一時フランス軍に従軍した。第二次世界大戦後、M・アレの著書を読んで一般均衡理論の存在を知って経済学に興味をもち、国立学術研究センターで経済学の研究員となる。1948年ロックフェラー・フェロー(研究生)として渡米、1950年コールズ・コミッションの研究員となる。1956年パリ大学において数学の博士号を取得、1962年カリフォルニア大学バークリー校の経済学教授に就任、1975年からは数学教授を兼任、同年アメリカに帰化した。
ドブリューは、数学的手法を駆使して実証データの分析を行い、その結果を用いて経済理論を検証した。1954年に発表したK・J・アローとの共同論文「Existence of an Equilibrium for a Competitive Economy」において、競争による自由市場での一般均衡(経済体系全体にわたる均衡)、競争均衡状態の存在を証明した。1959年に出版された主著『価値の理論』Theory of Valueにおいて、理論はより厳密に証明されている。このアロー、ドブリューの一般均衡モデル体系は、新古典学派の基礎理論として大きな影響を及ぼした。「経済理論への新しい数学的分析手法の導入と一般均衡理論を厳密に再構築」した功績によって、1983年のノーベル経済学賞を受賞した。
[金子邦彦]
『ジェラール・ドブリュー著、丸山徹訳『価値の理論――経済均衡の公理的分析』(1977・東洋経済新報社)』