アメリカの経済学者。ニューヨーク州立大学、コロンビア大学大学院に学び、コールズ・コミッション研究員、スタンフォード大学教授、ハーバード大学教授などを務める。その間、計量経済学会会長やアメリカ経済学会会長に就任したこともある。理論経済学の優れた研究によって、1957年にクラーク賞を、1972年にノーベル経済学賞を受賞した。
彼の業績は多岐にわたるが、初期の主著『社会的選択と個人的価値』Social Choice and Individual Value(1951)は、記号論理学の手法を用いて、民主主義的決定に内在する矛盾を明らかにした古典的な著作として名高い。そのほかにも、一般均衡体系における均衡解の存在やその安定性の解明、代替の弾力性一定の生産関数の研究、経済成長における「実行を通じての学習」効果の分析、価格の調整機構の考察、不確実性や危険負担に関する理論などの業績がある。
[志田 明]
『長名寛明訳『社会的選択と個人的評価』第2版(1977・日本経済新聞社)』▽『ケネス・J・アロー著、村上泰亮訳『組織の限界』(1999・岩波書店)』▽『大谷和著『「アロウの一般不可能性定理」の分析と批判』(1996・時潮社)』
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アメリカの理論経済学者。ニューヨークに生まれ,ニューヨーク市立大学,コロンビア大学卒(1951年同大Ph.D.)。シカゴ大学,スタンフォード大学,ハーバード大学を経て,1979年以降スタンフォード大学教授。一般均衡理論,資源配分機構と組織の経済学,社会的選択理論,危険・不確実性および情報の経済学,オペレーションズリサーチ,非線形計画理論,公共投資の理論など,数多くの領域において膨大かつ本質的な業績を上げている。競争的一般均衡の存在・安定・最適性,民主的な社会的選択機構の一般的存在不可能性などに関する重要な研究に対してノーベル経済学賞受賞(1972)。主著として,《社会的選択と個人的評価》(1951),《一般均衡分析》(F.H. ハーンとの共著,1971),《組織の限界》(1974)がある。
執筆者:鈴村 興太郎
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…ところでこのルールは,各個人が矛盾のない判断を表明していても,それらを集計した社会的判断が循環的矛盾を生むという〈投票のパラドックス〉の可能性を含むという事実が,古くフランスの啓蒙思想家M.J.A.N.deコンドルセにより発見された。社会的選択理論における古典的成果とされるK.J.アローの一般可能性定理general possibility theoremは,このようなパラドックスは単純多数決ルールにのみ固有の欠陥ではなく,実は民主的な集計ルール一般が避けえない難点であるということを論証したものである。さらにまた,いかなる集計ルールであれ,個人による虚偽の判断表明によりその個人の利益になるように操作される可能性をつねに潜めているという事実も,一般的な論証を受けている。…
※「アロー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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