ドラムブレーキ(読み)どらむぶれーき(英語表記)drum brake

翻訳|drum brake

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドラムブレーキ」の意味・わかりやすい解説

ドラムブレーキ
どらむぶれーき
drum brake

もっとも基本的な自動車のブレーキの一形式。車輪といっしょに回転する鋳鉄製のドラムの内側に、アスベストなどの摩擦材を張った二つ(まれには三つ)のシューを圧着して止める。初期にはブレーキペダルを踏むと、ロッドワイヤで引っ張ってカムを回転させ、シューを押し開いた。現在でも駐車ブレーキはロッドまたはワイヤでカムを働かせる機械式である。それに対し現代のドラムブレーキは、ブレーキを踏むとその背後のマスターシリンダーで油が圧縮され、配管を通じて各輪に達し、ホイールシリンダーがシューを押し開く。この場合パスカルの法則によって、マスターシリンダーの径を1、ホイールシリンダーの径を2とすれば、油圧が倍に増幅されて有利である。また回転するドラムにシューを圧着すると、シュー自体にも同方向の回転力が生じる。その回転力をうまく押し開く力に加算するように幾何設計すれば、いっそう強い制動力が得られる。この性質をセルフサーボ(自己倍力)といい、二つのシューの一方のみにサーボ力の生じるユニサーボと、双方に生じるデュオサーボとがある。

 ドラムブレーキは、形態上ドラム内部に熱が蓄積されやすく、山路の下りなどで頻繁に使用すると、ドラムが熱で膨張するとともに、表面摩擦係数低下、ついには効かなくなってしまう(この現象フェードという)。そこで現在では、使用条件の過酷な前輪にはディスクブレーキを用い、後輪に駐車ブレーキとしての能力に優れるドラムブレーキを用いるのが一般的になっている。

[高島鎮雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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