日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドロムシ」の意味・わかりやすい解説
ドロムシ
どろむし / 泥虫
昆虫綱甲虫目ドロムシ上科Dryopoideaに属する昆虫のうちドロムシ科Dryopidaeとヒメドロムシ科Elmidaeに属するものの総称。世界各地に分布し、一部を除き水生で、とくにヒメドロムシ類の種は流れの底にすむものが多いが、夜間活動し、灯火に飛んでくるものも少なくない。日本にはドロムシ科が1、2種、ヒメドロムシ科が45種前後産することが知られている。いずれも10ミリメートル以下の小さな甲虫で、長めの楕円(だえん)形から細長い形がほとんどであるが、卵円形のこともある。色は多くは暗色で、淡色紋をもつものもあり、ときに全体が明るい褐色の種もある。肢(あし)は細長いが、つめは大きく発達し、岩などに捕まるのに適している。触角は多くは糸状であるが、一部の種、とくにドロムシ科では太くて短く、棍棒(こんぼう)状をなす。
この類は一般に体下面に微毛を密生し、ここに蓄えられた空気の薄い層は気門と連なっており、水中で呼吸できるので、水底にある石に付着したり、砂中に潜っていることができる。幼虫は細長くて水生である。
近縁のチビドロムシ科Limnichidaeの種は卵形から楕円形の小さな甲虫で、水辺の砂地で発見され海浜にもいるが、オオメチビドロムシ属Cephalobyrrhusの種は舟形で、山林の伐採木に集まる。また、ヒラタドロムシ科Psephenidaeの種は主として卵形で平たく、水に近い葉上にみられ、灯火にくるものもあるが、幼虫は水生で、平たい小判形か卵円形、水底の石に付着して生活しており、英名でwater pennyとよばれる。
[中根猛彦]