改訂新版 世界大百科事典 「ナガ族」の意味・わかりやすい解説
ナガ族 (ナガぞく)
Naga
インドの北東部,ミャンマーとの国境に沿うナガ丘陵を中心にナガランド一帯に居住する人々。人口約50万。ヒンドゥー・カースト社会の影響をほとんど受けず,比較的古い文化の特色を残していることで知られている。人種的にはモンゴロイドに属し,コニャク,アオ,セマ,チャケサング,アンガミ,ロタ,その他多くの部族から成る。チベット・ビルマ語派系の言語を話すが,部族ごとの方言差が著しく,物質文化や社会組織の面でも地域差が少なくない。アンガミ・ナガでみごとな階段耕作が行われ,水稲作が営まれているのを除くと,焼畑農耕が生業の中心である。陸稲やアワ,トウモロコシ,一部でハトムギやタロイモが,その主作物になっている。集落は尾根上に営まれ,多数の家屋が密集し,防御的機能をもつものが多かった。かつては部族間の戦争や首狩りがよく行われていたからである。村には大きな男子集会所がある。若者の寝宿としてだけでなく,村の公的行事や宗教儀礼を行う場としても使われ,大きな木製の割れ目太鼓もある。この集会所の成員は外敵から村を守り,森や畑へ行く道を整備する義務をもつ。一般に父系の氏族がひろくみられるが,政治的統合形態としては,強力な首長制をとるもの(コニャク,セマ,チャングなど)と民主的な代表制をとるもの(アオ,アンガミ,ロタ,レングマなど)とがある。かつては首狩りが盛んで,首に宿った呪力を村にもち帰ると,共同体全体に利益をもたらすと信ぜられていた。ナーガの末裔(まつえい)ともいい,また,唯一の大型家畜であるミタン牛を大量にささげて供犠を行い,現世と死後の名誉を得る勲功祭宴を行うこと,巨石記念物をかつては盛んに建立していたことなどもナガ族文化の顕著な特色である。
第2次大戦後,独立を要求し,1963年ナガランド州が成立した。最近になって,部族ではなく,ナガ族としての自覚が高まってきたという。
執筆者:佐々木 高明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報