改訂新版 世界大百科事典 「ナンビクワラ」の意味・わかりやすい解説
ナンビクワラ
Nambiqwara
ブラジル西部,マト・グロッソ州の先住民部族。漂泊する採集狩猟民と考えられてきたが,最近の研究によれば半恒久的な村をもち,雨季の間はその周囲で焼畑を作り,乾季にはバンドに分かれて狩猟・採集の旅に出ると考えられている。この狩猟旅行の期間はかつて考えられていたよりもかなり短いとされている。ナンビクワラの物質文化は,熱帯雨林に住む部族よりさらに貧しく,厳しい生活条件の下にある。ひとつの集団は兄弟を中心とした近親者のグループを核にして形成されており,人数も30人前後と少ない。核となる集団のうちで,狩猟技術にすぐれ,寛大さなどの美点をそなえた男がリーダーとなるが,社会は均質・平等であり,リーダーに権力が集中しているわけではない。かつては1万人を超す大きな部族であったが,疾病などで人口が激減し,1990年には約900人にすぎない。
執筆者:木村 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報