ナンビクワラ
Nambiqwara
ブラジル西部,マト・グロッソ州の先住民部族。漂泊する採集狩猟民と考えられてきたが,最近の研究によれば半恒久的な村をもち,雨季の間はその周囲で焼畑を作り,乾季にはバンドに分かれて狩猟・採集の旅に出ると考えられている。この狩猟旅行の期間はかつて考えられていたよりもかなり短いとされている。ナンビクワラの物質文化は,熱帯雨林に住む部族よりさらに貧しく,厳しい生活条件の下にある。ひとつの集団は兄弟を中心とした近親者のグループを核にして形成されており,人数も30人前後と少ない。核となる集団のうちで,狩猟技術にすぐれ,寛大さなどの美点をそなえた男がリーダーとなるが,社会は均質・平等であり,リーダーに権力が集中しているわけではない。かつては1万人を超す大きな部族であったが,疾病などで人口が激減し,1990年には約900人にすぎない。
執筆者:木村 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ナンビクワラ
なんびくわら
Nambiqwara
ブラジル西部のマト・グロッソ州とロンドニア州に住む先住民集団。人口は885(1989)。マト・グロッソ高原の広い地帯に散在する11の集団に分かれているが、国道364号線の開通によって居住環境は激変し、現在ではマト・グロッソ州に9つ、ロンドニア州に1つの計10か所の先住民区に住む。言語は類縁関係不明のナンビクワラ語で、集団間の方言差が大きい。移動する狩猟民で、未開部族の代表のように扱われることが多かった。確かに物質文化の面では、熱帯林に住む部族より貧しく、生活条件は厳しい。しかし、最近の研究によれば、半恒久的な村を営み、雨期にはその周囲で行う焼畑が主たる生業であると考えられている。バンドに分かれて狩猟採集旅行に出るのは乾期に限られる。一つの集団は兄弟を中核とする30人ほどの近親者によって構成されており、優れた狩猟技術や寛大さなどの資質をもったリーダーに率いられる。社会は均質平等であり、メンバーの間で格差はほとんどない。
[木村秀雄]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内のナンビクワラの言及
【アメリカ・インディアン】より
…毒草による魚採り,儀礼の際の幻覚植物の利用もさかんである。[ナンビクワラ]族やシリオノ族,マク族など農耕よりも採集・狩猟や漁労を主たる生業とする民族もいるが,数は少ない。
[採集・狩猟民]
アルゼンチンとチリ南部の地域は,16世紀のヨーロッパ人の植民地に入るまで農耕が行われなかった。…
※「ナンビクワラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」