改訂新版 世界大百科事典 「ナンヨウアブラギリ」の意味・わかりやすい解説
ナンヨウアブラギリ
Jatropha curcas L.
熱帯アメリカ原産のトウダイグサ科の小高木。タイワンアブラギリともいう。英名はphysic nut,Barbados nut,purging nut。世界の熱帯に,栽培あるいは半野生状態で広く分布する。高さ2~5m。葉は互生し広卵形,基部が心形で,3~5浅裂する。葉身の長さは10~20cm,長い葉柄がある。アブラギリの葉に似るが別属である。切ると有毒の乳液が出る。雌雄同株で雄花と雌花がある。花は黄緑色で小さく,茎頂付近に総状花序をなして多数つく。果実は長さ4cmほどの扁球形をした蒴果(さくか)で,黒褐色の扁平な長楕円体の種子を2個入れる。種子は長さ15~20mm,約50%の有毒な油を含み,クルカス油,フィジックナット油,シード油,クロトン油などとよばれる。リバプール市を最初に,19世紀半ばごろまで街路灯油として重用された。またセッケン用,塗料,潤滑油,吐剤や下剤としても使用され,油かすは肥料として用いられる。熱帯ではしばしば生垣として植栽される。
ナンヨウアブラギリ(ヤトロファ)属はアメリカおよびアフリカの熱帯,亜熱帯に約150種があって,花序の美しいものや多肉植物を有し,その中の数種が観賞用に栽植される。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報