アブラギリ(読み)あぶらぎり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラギリ」の意味・わかりやすい解説

アブラギリ
あぶらぎり / 油桐
[学] Vernicia cordata (Thunb.) Airy Shaw
Aleurites cordata Steud.

トウダイグサ科(APG分類:トウダイグサ科)の落葉高木。別名ドクエ。高さ10メートルほどになる。葉は心臓状の卵円形で先は尖(とが)り、しばしば浅く3~5裂する。長さは15センチメートルほど、葉柄も同程度の長さで、枝先に集まってつく。花は白色の5弁花、花弁の基部は初め淡黄色、のちに紅変する。果実球形で直径2.5センチメートルほど、縦に3本の筋(すじ)が入る。中は3室に分かれ、それぞれに1個の種子が入る。種子を絞ってとる油を桐油(きりゆ)とよぶ。これは空気中にさらされると固化する乾性油で、水に対する抵抗性が強く、油紙や提灯(ちょうちん)に使う油紙をつくり、また塗料の溶剤とする。材は軽く、下駄(げた)や家具の材料とする。中部地方以西の本州、四国、九州に生える。中国原産の栽培植物ともいわれる。またアブラギリは、シナアブラギリ(オオアブラギリ)V. fordii (Hemsl.) Airy Shaw(A. fordii Hemsl.)やカントンアブラギリV. montana Lour.(A. montana Wilson)などのアブラギリの仲間の総称としても用いる。シナアブラギリの果実は直径3~5センチメートル、5個前後の種子が入り、油の質もよい。

[星川清親 2020年6月23日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブラギリ」の意味・わかりやすい解説

アブラギリ(油桐)
アブラギリ
Aleurites cordata; tung oil tree

トウダイグサ科の落葉高木。中国原産で,古くから日本に渡来して栽植され,暖地では自生状態になっている。高さ 10mにも達し,葉は心臓形で長い柄があり互生する。初夏,枝先に円錐花序を出し白色5弁の単性花を多数咲かせる。秋に,球形の果実が熟し,中に3個の種子が入っている。種子に 30%内外の乾性油を含み,圧搾して桐油 (とうゆ) をとる。成分はエレオステアリン酸が 77~82%,ほかにオレイン酸,ステアリン酸などを含む。乾燥性がよく,古来,油紙,雨傘,ちょうちんなどに塗ったり,ペンキニス,印刷用インキなどに利用されるが,食用にはならない。なお往時灯油にも用いられ,その油煙から墨 (すみ) がつくられた。

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