ニコ(その他表記)Jean Nicot

改訂新版 世界大百科事典 「ニコ」の意味・わかりやすい解説

ニコ
Jean Nicot
生没年:1530?-1604

フランスの文法・言語学者,王室請願聴聞官。南フランスのニームに生まれ,パリに上京して宮廷出仕(1553-54)。学識手腕を買われて1559年夏,ポルトガル駐在大使に任じられリスボンに赴き,ブラジル植民問題で緊張を増した両国関係の打開に努力。61年秋辞任帰国後は学問に没頭し,ロンサールその他の文人と交わる。最大の功績は実質的に史上最初のフランス語辞典《古近フランス語宝典》(1606)を編纂したことであろう。その原型となったロベール・エティエンヌの《仏羅辞典》(1539)は,1549年の第2版でかなり増補されたとはいえ,なおラテン語の同義語を併記した語彙集の域を大きく超えるものではなかった。ニコは自ら蓄積した資料を活用してこれを大幅に改め,多くの語に史上初めてフランス語による定義を下し,用例を記載し成句を収め,かつ初めてラテン語源を指摘した。その結果仏羅辞典の性格も保持しながら史上初のフランス語辞典が誕生した。不幸にも本書は大量に売れ残り,出版者は扉のみ1621年と刷り直した偽装再版を作って残部をさばこうとした。なおリスボン滞在中ニコは新大陸渡来のタバコを入手して王母カトリーヌ・ド・メディシスに献上し,世上フランスにタバコを初めてもたらしたのは彼とされた。自らの辞典にもその名をもとにニコティアーヌnicotianeの名で説明があり,またニコチンの名も後に彼にちなんでつけられたものである。しかし事実は1556年ブラジル帰りの地誌学者・旅行家アンドレ・テベが持ち帰ったと考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のニコの言及

【タバコ(煙草)】より


【作物としてのタバコ】

[種類,形状]
 ナス科タバコ属Nicotianaの植物で,通常一年草。タバコ属は現在65種が発見され,多くはニコチン,アナバシンなど数種類のアルカロイドを含んでいる。…

【タバコ(煙草)】より


【作物としてのタバコ】

[種類,形状]
 ナス科タバコ属Nicotianaの植物で,通常一年草。タバコ属は現在65種が発見され,多くはニコチン,アナバシンなど数種類のアルカロイドを含んでいる。現在栽培されているのはそれらのうちニコチンを主アルカロイドとするタバコN.tabacum L.(英名tobacco)(イラスト)とマルバタバコN.rustica L.(英名Aztec tobacco)である。…

※「ニコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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