日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ニューヨーク州運河システム
にゅーよーくしゅううんがしすてむ
New York State Canal System
アメリカ合衆国東部、ニューヨーク州、エリー湖に臨むバッファローとハドソン河畔のトロイ付近を結ぶ水路(エリー運河)を幹線とする、艀(はしけ)用の運河網。1992年に旧称のニューヨーク州バージ運河から改称した。エリー運河、オスウェゴ運河、カユーガ・セネカ運河、シャンプレーン運河と、運河化された河川や湖から構成される。ニューヨーク州高速道路公社(New York State Thruway Authority)の子会社であるニューヨーク州運河会社(New York State Canal Corporation)により管理、運営されている。全長約840キロメートル。57の水門をもつ。幹線部分であるエリー運河は長さ約540キロメートル、水面幅37メートル、深さ3.7メートル。エリー運河は1817~1825年、ニューヨーク州知事デ・ウィット・クリントンDe Witt Clinton(1769―1828)の主唱で建設された。ニューヨーク港はこの運河の開通によって、後背地を一挙に五大湖地方に拡大したため、同運河システムはアメリカ史上もっとも成功した運河と称された。沿岸ではオルバニー、ロチェスター、シラキュース、ウチカ、バッファローなどの都市が、運河を利用する商品流通の要地として繁栄した。しかし、19世紀後半には鉄道の発達によって運河交通は衰えた。運河の改修は何回かなされたが、1918年に大規模な改修が加えられ、施設の拡張と支線となる水路網が整備された。1970年代以降は輸送手段としての役割は限定的であり、観光、レジャー目的の利用が大きくなっている。経路変更により運河が廃止された区間を含め、一部区間が公園や史跡として整備されている。
[青木栄一・青木 亮]