改訂新版 世界大百科事典 「ニンバールカ」の意味・わかりやすい解説
ニンバールカ
Nimbārka
ヒンドゥー教ニンバールカ派の開祖。生没年不詳。14世紀ころの人と思われる。現在の南インド,アーンドラ・プラデーシュ州出身で,北インドのマトゥラー近傍のブリンダーバンを中心に活躍。主著は《ブラフマ・スートラBrahma-sūtra》に対する注釈(《ベーダーンタパーリジャータサウラバVedāntapārijātasaurabha》)で,牧人クリシュナと愛人ラーダーの崇拝をベーダーンタ哲学によって基礎づけた。ブラフマンをビシュヌ神あるいは脇にラーダーを伴ったクリシュナと同一視し,ブラフマン,個我,物質世界はそれぞれ永遠の実在であるとした。ブラフマンは原因,個我は結果であって,両者は同一ではないがまたまったく異なっているわけではなく,太陽と光線のように本質的不一不異svābhāvikabhedābhedaの関係にある。解脱とは神のごとくなること,本性と属性において似たものとなることであり,これは神の恩寵によって可能である。そのための最高の手段はバクティである。彼の場合の神人関係はきわめて甘美である点に特徴がある。
→不一不異説
執筆者:前田 専学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報