改訂新版 世界大百科事典 「ネジレバネ」の意味・わかりやすい解説
ネジレバネ
stylopid
ネジレバネ目Strepsipteraに属する昆虫の総称。撚翅(でんし)類ともいう。すべて他の昆虫(おもに半翅類と膜翅類,少数がシミ類,直翅類,カマキリ類)に内部寄生し,著しい雌雄異形を示す。雄のみが有翅で,羽化後寄主体から脱出するが,きわめて短命。名のように前翅がねじれた棍棒状で,膜質の後翅のみによって飛ぶ。体長は雄1.3~8mm,雌2~15mm。触角は4~7節で,少なくとも第3節には必ず1本の長い側枝がある。さらに第4節あるいは第4~6節にも1本ずつの側枝をもつものもある。脚には転節がなく,跗節(ふせつ)は2~5節で,4節以下のものではつめもない。雌は無翅,しかもシミ類に寄生する数種を除き,すべて終生寄生性で,寄主の腹部体節の間からわずかに突出する薄板状の頭胸部と,円筒形の腹部とが区別できるのみで,眼,触角,脚はない。雌雄とも成虫は食物をとらないので,口器は退化の傾向を示す。卵は雌の体内で孵化(ふか)し,数千~数万の1齢幼虫が母虫の頭胸部にある開口からはい出して寄主体を離れ,新しい寄主幼虫を求めて分散する。うまく寄主幼虫に到達するとその体内に侵入して寄生生活を営み,寄主の羽化後に成虫となる。
2種の化石種を含め9科約440種が両極地域を除いたすべての大陸から知られ,オーストラリア大陸にはなお約90種の未命名種がいるという。日本からは5科21種が知られるが,スズバチネジレバネ(ドロバチ類寄生),スズメバチネジレバネ(スズメバチ類に寄生)などのハチネジレバネ科のほか,ウンカ,ヨコバイにそれぞれ寄生するエダヒゲネジレバネ,クシヒゲネジレバネは天敵としても有用である。またアリネジレバネ科の雌は直翅類に寄生すると考えられており,沖縄にはその1種クツワムシネジレバネの雌がタイワンクツワムシから見いだされているが雄は未知。ほかにツチカメムシなどからのツチカメネジレバネが知られる。
執筆者:木船 悌嗣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報