日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネスレ」の意味・わかりやすい解説
ネスレ
ねすれ
Nestlé S.A.
スイスの世界的食品会社。2009年度『フォーチュン』誌(アメリカの経済誌)のグローバル500社のランキングでは第48位であるが、食品部門では第1位で、世界最大の規模を誇る。1866年設立のアングロ・スイス・ミルク社Anglo-Swiss Condensed Milk Co.と、翌年設立されたアンリ・ネスレ商会S.A. Farine Lactée Henri Nestléは、コンデンスミルク、育児食品の製造販売をめぐって激しく競争していたが、この両社が1905年に合併して誕生した。また同じころチョコレート分野にも進出した。第一次世界大戦後、業績不振に陥ったため、銀行家のルイ・ダプレLouis Dapplésを経営陣に迎えて、同族的色彩を払拭(ふっしょく)した。1936年、持株会社化し、1938年にはインスタントコーヒーのネスカフェNescaféを開発。1947年にはスイスの固形スープメーカー、マギーMaggi社の持株会社アリメンターナAlimentana S.A.と合併し、ネスレ・アリメンターナNestlé Alimentana Co.と改称した。1977年から現社名となる。1985年にペットフードと乳製品のカーネーション社Carnation Co.(アメリカ)、1988年にはパスタと調理用食品のブイトーニ・ペルジーナBuitoni-Perugina社(イタリア)、1992年にはミネラルウォーターのペリエPerrier社(フランス)を買収した。
商品群は前記のほか、ミネラルウォーターのヴィッテルVittel、粉ミルクのニドNido、チョコレートのキットカットKit Kat、ペットフードのフリスキーFriskiesなどが知られる。さらに食品以外では、1974年に傘下に収めたフランスの化粧品会社ロレアルL'Oréalと、1977年に買収したアメリカの眼科用薬品会社アルコンAlcon Laboratories, Inc.の製品もあり、営業分野は広い。2008年の売上は1099億0800万スイス・フラン、純益180億3900万スイス・フラン。製品別売上高は、栄養関連9.4%、飲料25.9%、乳製品・アイスクリーム18.7%、調理用食品・調味料16.5%、チョコレート・菓子11.3%、ペットケア11.3%、医薬品6.9%。地域構成ではヨーロッパ37%、北米30%、南米14%、アジア13%、アフリカ3%、オセアニア3%であった。2008年現在、世界に456の工場をもち、従業員数は28万3000人。
日本へも早くから進出しており、1913年(大正2)には横浜に支店がつくられているが、本格的な業務が開始されたのは1960年(昭和35)、神戸にネッスル日本が設立されてからである。なお、同社は1994年(平成6)8月にネスレ日本と表記を変更している。ネスレ日本の資本金は200億円、従業員数約2100人(2009)。
[湯沢 威・上川孝夫]