知恵蔵 「ネット私刑」の解説
ネット私刑
近年、集団暴行死事件や、いじめを苦に中学生が自殺した事件の加害者と見られる人物の実名や、写真、家族構成などが、第三者によってTwitterなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や、2ちゃんねるなどの掲示板に匿名で公開され、拡散されることがしばしば起こっている。SNSや掲示板は、第三者が自由に書き込みできるため、基の情報に追加情報や中傷等の書き込みが次々と加えられ、特定の個人に対する画像や文章を使った集団リンチのような状態となる。
ニュースサイト運営会社「J-CAST」が、2015年に実施したアンケート調査によると、ネット私刑に対するインターネットユーザーの意見は、「場合によるが、犯罪行為を行ったのだから仕方がないと思う」が約4割、「集団リンチをするべきではない」は3割以上であった。
また、拡散された情報には、デマや誤りも多く、実際に加害者の親族と誤認された人物の個人情報が公開されたり、事件とは関係ない人物が非難されたりすることもある。
近年は、未成年が集団暴行やいじめを引き起こす事件が多く、それらに伴うネット私刑が増えている。少年法61条では、少年(20歳未満の未成年者)が犯した事件について、名前や住所、容貌(ようぼう)など、その少年と推しはかることができるような記事や写真を新聞やその他の出版物に掲載することを禁じている。しかし、少年法は61条に違反した場合の罰則を定めていない。かつて週刊誌が独断で未成年の顔写真などを公開して話題となったが、インターネット上では、出版物よりも情報の拡散が比較的容易に行われ、また、情報の削除が難しいために、ネット私刑は、様々な面から問題視されている。
(横田一輝 ICTディレクター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報