匿名(読み)とくめい(英語表記)anonym

精選版 日本国語大辞典 「匿名」の意味・読み・例文・類語

とく‐めい【匿名】

〘名〙 自分姓名をかくすこと。本名を秘して記さないこと。手紙著作などの氏名を記さない場合、「一読者」など身分だけを記す場合、ペンネーム頭文字仮名などを用いる場合などがある。〔音訓新聞字引(1876)〕
※近世紀聞(1875‐81)〈条野有人〉初「禁中へ匿名(トクメイ)の書を投ぜし者あり」 〔唐国史補‐下〕

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デジタル大辞泉 「匿名」の意味・読み・例文・類語

とく‐めい【匿名】

自分の名前を隠して知らせないこと。また、本名を隠してペンネームなどの別名をつかうこと。「匿名で投書する」「匿名批評」

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改訂新版 世界大百科事典 「匿名」の意味・わかりやすい解説

匿名 (とくめい)
anonym

作者,執筆者の名を明らかにすることなく文章,意見を公表する行為,ときには実名を伏せた筆者名,雅号,ペンネームなどをさす。表現行為としての匿名が問題となるのは,発言の責任を負うべき者が特定できないという発表様式のばあいである。言い伝えや筆写によって文化が伝承されていた時代には,作者と無関係に作品がひろがり伝わることがふつうだった。大衆歌謡には作者不明のものが少なくないし,現代でもたとえば広告やデザインについては作者について考えることなしに関心を呼んだり話題となっていることが多い。しかし,作品をそれだけで独立の文章として読ませたいと願うばあいには,匿名で発表することが選ばれた。たとえば新聞の社説は,集団としての社員の共通意見という意味もこめて,現在なお匿名の伝統がつづいている。外国では新聞に固定欄を書くコラムニストは社外の寄稿者でその筆者名を記していることが多い。しかし,日本では《朝日新聞》の〈天声人語〉のように社内の論説委員一人が継続して書くばあいも匿名としている。社外からその内容について責任を問われたときには,論説主幹が応ずる。匿名の文章は集団の共通意見であるべきで個人的な見解はひかえねばならない,という説が成り立つゆえんである。

 一方,実名が秘匿されているからこそ鋭い批評をなしうるということもある。とくに芸術批評の領域で匿名批評はしんらつさを競いがちで,たとえば第2次大戦後日本では占領軍に追放処分を受けていた林房雄が《読売新聞》の文化面〈東西南北〉欄を担当(1947-51)し,白井明(〈白い眼〉の当て字)の筆名で文壇をなで切りしたことが有名である。このほか,《週刊新潮》の社会時評〈東京情報〉(1960-97)の執筆者ヤン・デンマン,ベストセラーとなった《日本人とユダヤ人》(1970)の著者イザヤ・ベンダサンについても匿名とみなす説が強い。
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普及版 字通 「匿名」の読み・字形・画数・意味

【匿名】とくめい

かくしな。本名を記さない。〔唐国史補、下〕名して謗(そし)りを(な)す、之れを無名子と謂ふ。

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