日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネヘミヤ記」の意味・わかりやすい解説
ネヘミヤ記
ねへみやき
The Book of Nehemiah
『旧約聖書』中の諸書の一つ。元来は「エズラ記」といっしょに一巻をなしていた。「歴代志」上下に続く歴史的内容を伝えているが、ヘブライ語原典の順序はその前に置かれている。それは、前者の正典化が早かったことと、後者の内容が「サムエル記」や「列王紀」と重複していたためと考えられる。本書の制作年代は、一般に紀元前300年ごろと推定されている。「ネヘミヤ記」は、ユダヤ地区総督ネヘミヤのエルサレム城壁工事と強制移住による都市国家の再建、祭司エズラの神殿教団設立の経過を伝えている。「ネヘミヤ記」の中心は、ネヘミヤ自身が行った事業を「わたしは……」と一人称で回顧し、神に捧(ささ)げた「ネヘミヤ回顧録」である。それは13章全体のほぼ3分の1に及ぶ。ネヘミヤの事業は、歴史的にはエズラの活動といっしょにユダヤ教成立の基礎を築いた。
[吉田 泰]