日本大百科全書(ニッポニカ) 「エズラ記」の意味・わかりやすい解説
エズラ記
えずらき
The Book of Ezra
『旧約聖書』中の一書。紀元前3世紀ごろの成立とされ、10章からなる。本来はこの書に続く「ネヘミヤ記」とともに、一冊の「エズラ記」を形成していた。エズラもネヘミヤもともに、ユダヤ民族のバビロン捕囚(前587~前538)後のユダヤ教の発展に重要な役割を果たした指導者であるが、書名は主人公や著作者名を表すものではなく、むしろエズラの名にその時代の宗教精神を託したものである。内容は、(1)捕囚からの解放と故国への帰還、エルサレム神殿再建の苦心(1~6章)、(2)律法学者エズラの帰還と宗教改革(7~10章)に分かれる。その改革は徹底的な律法の遵守を要求し、異教徒との雑婚の禁止を特徴とする。これらは、後のユダヤ教の律法第一主義と民族の純血を基盤にした選民観に道を開いた。
[秋輝雄]