日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノコギリダイ」の意味・わかりやすい解説
ノコギリダイ
のこぎりだい / 鋸鯛
striped large-eye bream
[学] Gnathodentex aureolineatus
硬骨魚綱スズキ目フエフキダイ科に属する海水魚。茨城県以南の太平洋沿岸、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、東南アジア、ポリネシア、インド、紅海、アフリカ北東部沿岸、太平洋、インド洋に広く分布する。吻(ふん)は短く、目は大きい。頬(ほお)に鱗(うろこ)がある。両顎歯(りょうがくし)は外側に1列の円錐歯(えんすいし)と内側に幅の狭い歯帯がある。上顎の側面に鋸歯(きょし)状の隆起があるのが特徴(涙骨(るいこつ)で覆われて見えにくい)で、この魚名の由来でもある。背びれと臀(しり)びれは普通9~10軟条で、胸びれは15軟条からなる。胸びれの腋部(えきぶ)の内側は無鱗(むりん)。側線鱗数は多くて60~70枚。小形の種で最大全長は約35センチメートルで、普通は20センチメートルぐらい。体の背側面は暗褐色で、各鱗にある黄橙(こうとう)色の小円斑(えんはん)で形成された縦走帯が密に走る。腹側面は銀灰色で4~5条の橙褐色の縦帯がある。各ひれはすべて淡紅色。背びれ軟条後端下にある黄色円斑は、死亡個体では不明瞭(ふめいりょう)な黄白色斑にすぎないが、遊泳時には輝いており、種の識別に役だつ。サンゴ礁浅海域にすみ、ときどき100尾以上の大きい群れで遊泳する。亜熱帯と熱帯水域では普通にみられる種類。琉球(りゅうきゅう)諸島ではやや多い種類で、有用食用魚である。沖縄ではムチヌイユとよばれている。近縁種に、まれにとれるコケノコギリがある。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年4月18日]