改訂新版 世界大百科事典 「ハイノキ」の意味・わかりやすい解説
ハイノキ
Symplocos myrtacea Sieb.et Zucc.
暖地の丘や山地に生えるハイノキ科の常緑低木または小高木。高さはときに数m以上になり,枝は褐色であるが,乾くと葉とともに黄色を帯びる。葉は互生し,狭卵形で長さ5cmあまり,先はとがり,縁に低い鋸歯があり,表面には光沢がある。花は5~6月ころ咲き,花柄は細長い。花冠は5深裂し,白色,おしべは多数。果実は卵形で,紫黒色に熟し,長さ1cmに達しない。近畿地方以西の本州と四国および九州に分布し,古い自然林内で群生しているところも多い。なお,同属のクロバイS.prunifolia Sieb.et Zucc.とクロキS.lucida Sieb.et Zucc.はともに常緑の小高木で,日本では本州から琉球まで見られる。またシロバイS.lancifolia Sieb.et Zucc.は近畿地方以西に分布する。
ハイノキ属Symplocosは300種以上を有する大きな属で,東南アジア,アメリカなどの熱帯・亜熱帯を中心に分布している。すべて樹木で,高木になる種では材が利用され,果実が地方的に食用にされているものもある。また,アルカロイドを含有しており,薬用にされる種がある。焼くとよい灰ができるので,ハイノキといい,この灰を染物に使うことがある。
執筆者:山中 二男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報