法則の辞典 「ハドソンの規則」の解説
ハドソンの規則【Hudson's rule】
第一則:別名を等旋光度則*という.糖類の旋光度について成立する経験的法則.別名を「ハドソンのイソローテーション則」ともいう.糖類のアノマーの立体配置を決定できる規則である.たとえばグルコピラノースの α 型と β 型において,C1 炭素の旋光寄与をA,残り全部の寄与をBとしたとき,一方のアノマーの分子旋光度は[+A]+[+B],他方のアノマーの分子旋光度は[-A]+[+B]のようになる.この場合「C1 の旋光寄与Aは,それ以外のところで起きた構造変化にはほとんど影響されない」(第一規則),および「C1 の構造に変化があっても,Bにはほとんど影響を与えない」(第二規則)ということになるが,この二つの経験則を合わせて「等旋光度則」という.
第二則:別名をラクトン則*という.ラクトン環の位置と旋光方向との間の関係を表す経験則.マンノン酸やグルコン酸などのオキシカルボン酸の立体構造を,カルボキシル基を上端においた投影式で描き,下方にあるヒドロキシ基と結んでラクトン環をつくらせた場合,炭素骨格鎖よりもラクトン環が右側にできれば右旋性,左側にできれば左旋性となる.ハドソンのラクトン法則*とも呼ばれている.
第三則:別名を「アミド則」という.アルドン酸のアミドの旋光度の符号は,α 位のヒドロキシ基の立体配置のみで決定される.Dであれば正に,Lであれば負になる.
第四則:別名を「フェニルヒドラジド則」という.アルドン酸のフェニルヒドラジドの旋光性と立体配置の関係を示す規則で,α 位のヒドロキシ基がDであれば正,Lであれば負となる.