ハナワラビ(読み)はなわらび(英語表記)grape-fern

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナワラビ」の意味・わかりやすい解説

ハナワラビ
はなわらび / 花蕨
grape-fern
[学] Sceptridium ternatum (Thunb.) Lyon

ハナワラビ科の冬緑性シダで、秋に芽生えて春に枯れる。フユノハナワラビともいう。地中根茎から1本の草質の短茎(共通柄)を伸ばし、これが栄養葉と胞子葉とに分岐する。オオハナワラビS. japonicumはやや大形になる近縁種である。ナツノハナワラビJapanobotrychium virginianumは夏緑性で3回羽状の栄養葉をもち、分布が広く、北半球全域にみられる。ヒメハナワラビBotrychium lunariaも夏緑性で広い分布をもち、日本では、北海道南部から九州にかけての低山、平野草地に生える。中国やインド、ヨーロッパにも分布する。ヨーロッパでは古くから霊草とされ、魔女月夜にこれを摘んで呪術(じゅじゅつ)に用いたり、錬金術師がこの草の力を借りて水銀を純銀に変えたりすると考えられていた。

[栗田子郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナワラビ」の意味・わかりやすい解説

ハナワラビ(花蕨)
ハナワラビ
Sceptridium ternatum; grape fern

ハナワラビ科の冬緑性シダ植物で,フユワラビともいう。アジア東部の温帯およびヒマラヤにまで広く分布し,山地原野日当りのよいところに生える。肉質の細い地下茎から葉を直立して基部でふたまたに分れ,1つは長い柄をもつ栄養葉で3~4回羽状に深裂する。他は4回羽状に分れた胞子葉で,裂片は軸だけで細く,軸の周囲に大型の胞子嚢を群生する。胞子葉は栄養葉よりはるかに長く直立する。胞子は球形の四面体型で黄色。近縁種のオオハナワラビ S. japonicumは栄養葉が3回羽状に深裂し,本種よりやや大型で,葉柄羽軸に灰色の長毛がまばらに生える。

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