中国、甘粛(かんしゅく/カンスー)省、エチナ川の下流デルタの東端にある西夏・元代の遺跡。ハラ・ホトはモンゴル語で「黒い城」の意。西夏の黒水鎮燕軍(こくすいちんえんぐん)の地といわれる。ここは19世紀末からロシアのポターニンらによって注目されたが、1908~09年コズロフ、1914年A・スタインによって発掘され、多数の遺物を出土した。とくに西夏文字による多数の典籍の出土で名高い。城壁は木筋塼(せん)造りの不等辺四角形で、東壁405メートル、西壁357メートル、南壁425メートル、北壁445メートルである。城内は官庁街と商店街に分かれ、三つの寺院址(し)があり、城外にイスラム墳墓が発見されている。この地域は古くから河西地方とモンゴリア、およびオルドスと天山東端部との中継基地として栄え、漢代にはここを中心に烽火(ほうか)台による匈奴(きょうど)の防衛線が展開していた。1930~31年、西北科学考査団(団長S・A・ヘディン)の支隊のベルグマンはこの地方の漢代遺址(いし)から約1万点の漢文木簡(居延漢簡(きょえんかんかん))を発見したが、さらに1972~76年、中国の居延考古隊は新たに1万9637枚の漢簡を、1983~84年には中国内蒙古文物考古研究所・阿拉善(アルシヤ)盟文物考古隊が元朝初期の3000件に及ぶ文書を発見した。
[長澤和俊]
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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