翻訳|hammer throw
陸上競技の投擲(とうてき)種目の一つ。直径2.135メートルのサークルの中で静止の状態からターンをしてハンマーを投げ、その距離を競う。投擲種目のうちで唯一、手袋の着用が認められる。ハンマーは(1)金属製頭部、(2)接続線(ワイヤー)、(3)ハンドル(取っ手)の三つの部分からなる。頭部は砲丸に似た鉄または真鍮(しんちゅう)などの固い材質でつくられ、完全に球形のもの。ハンマーの柄(え)にあたる接続線は、直径3ミリメートル以上の継ぎ目や節のないバネ鋼線でつくられ、その先端にバネ鋼線の環(わ)でつくられた取っ手がつく。接続線、ハンドルとも投擲中に伸びを感じるようなものであってはならない。日本陸上競技連盟競技規則によれば、ハンマーの総重量は、オリンピックなどの一般男子用が7.26キログラム以上、高校・ジュニア男子用が6キログラム以上、一般・高校女子用が4キログラム以上。グリップの内側から測ったハンマーの長さ(最長)は一般・高校・ジュニア男子用が1.215メートル、女子用が1.195メートルとなっている。
非常に危険なため、サークルの周りには高さ7メートル以上で繊維の紐(ひも)または鋼製ワイヤーでつくられた堅固な囲いを取りつけることが義務づけられている。さらに囲いの開口部分には、高さ9メートル以上(国際ルールは10メートル以上)の可動パネルを設置することになっている。計測は、ハンマーの頭部の落下によってできた痕跡(こんせき)のサークルにもっとも近い地点から、サークルの中心をつなぐ線上で、サークルの円周の内側までを測る。距離は1センチメートル単位で記録し、端数は切り捨てる。無効試技(ファウル)と判定されるのは、(1)投げたハンマーが地上に落下する前に競技者がサークルから出た場合、あるいは落下後でもサークルの半円より前から外に出た場合、(2)ハンマーの頭部がサークルの円心から前方の左右34.92度に引かれた2本のラインの上および外側に落ちた場合である。ハンマーのワイヤーや握りの位置は関係がない。また、囲いの一部にあたっても無効にはならない。
ターンは通常3回転ないし4回転。8人を超える競技者が参加した場合は、各3回の投擲が許されたのち、ベスト8に対し、成績の低い順からさらに3回の投擲が許され、計6回のベストで順位を決める。同記録の場合は、6回のうちの2番目、3番目と順を追って、次によい記録を比べ合って決める。それでも決まらない場合は同順位とする。参加選手が多数の場合は予選を行う。
オリンピックでは、1900年のパリ大会から実施され、長い間、男子だけの種目であった。しかし、女性の体力向上に伴い、1999年の世界選手権から女子も正式種目となり、オリンピックでも2000年のシドニー大会から採用された。体格面で日本人には不利といわれた種目だが、オリンピックでは室伏広治(むろふしこうじ)(1974― )が4回転ターンで2004年(平成16)のアテネ大会で金メダル、2011年の世界選手権優勝後の2012年ロンドン大会でも銅メダルを獲得している。2020年1月時点での世界記録は男子がユーリ・セディフYuriy Sedykh(旧ソ連。1955―2021)の86メートル74センチ(1986年)、女子はアニタ・ウォダルチクAnita Włodarczyk(ポーランド。1985― )の82メートル98センチ(2016年)である。
[加藤博夫・中西利夫 2020年2月17日]
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…しかし,これも棒高跳びの場合と同様,かつて硬い砂場だった落下場所がソフトラバーを敷き詰めた柔らかいピットに変わったという着地面の改良がなければ実現しなかったことであろう。1950年代に砲丸投げで後ずさりにステップする投法を考え出したオブライエンW.P.O’Brien(アメリカ)や,ハンマー投げでの4回転ターンの技術開発などの成果は記録向上に多大の貢献をした。 タイムの計測,距離の測定も驚異的な進歩を遂げた。…
※「ハンマー投げ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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