日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハンミョウ」の意味・わかりやすい解説
ハンミョウ
はんみょう / 斑猫
[学] Cicindela japonica
昆虫綱甲虫目ハンミョウ科に属する昆虫。本州、四国、九州、対馬(つしま)、屋久島(やくしま)に分布し、よく似たシナハンミョウは中国、朝鮮半島に、オキナワハンミョウは琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)に分布する。体長20ミリメートルほどの甲虫で、日本産ハンミョウ類ではもっとも美しく、頭は金緑色、前胸は金赤色で、前後が金緑色に光り、上ばねは黒紫色で赤銅色の横帯と白色の横紋がある。成虫は春から秋までみられ、日当りのよい砂地や道路に多く、大きく鋭い大あごでハエなどの虫を捕食し、人が歩くと先へ先へと飛んでは止まるのでミチシルベ、ミチオシエともよばれる。幼虫は地面に縦穴を掘って隠れ、平たくて大きな頭で穴をふさぎ、通りかかるほかの虫に食いつき、穴に引き込んで食べる。幼虫の巣穴にニラの葉を差し込むと、幼虫が葉に食いついてくるのでニラムシの名もある。なお「ハンミョウには毒がある」という言い伝えは、カンタリジンを含むツチハンミョウやマメハンミョウの類をさすものと考えられる。
ハンミョウ科Cicindelidaeは世界各地に広く分布し、およそ2500種が知られ、熱帯・亜熱帯域に多いが北地にもおり、日本でも23種前後が知られている。一般に中形の甲虫で、オサムシ科に近縁で、ときにはその亜科とされるが、鋭くて大きい大あご、突出した目、幅広い頭楯(とうじゅん)、細く長い脚(あし)などが特徴的である。多くの種類は金属色を帯び、ハンミョウ属や近縁の属では背面が鈍い青銅様の光沢を示すものが多い。体下面などに白い鱗毛(りんもう)をもつものも多い。大部分は地表性で河原、海浜、山道などによくみられ、よく飛ぶものが多いが、南方には後ろばねが退化して飛べないハネナシハンミョウのような類もあり、クビナガハンミョウのように葉上にみられ、幼虫が樹枝に穴をつくる類もある。成虫・幼虫とも肉食でほかの虫を捕食し、幼虫は穴に隠れて獲物を待つ。日本産にはニワハンミョウ、カワラハンミョウ、ヒメハンミョウ、コハンミョウなどがあり、本州中部地方以北産のマガタマハンミョウは後ろばねが退化して飛べない。
[中根猛彦]