日本大百科全書(ニッポニカ) 「オサムシ」の意味・わかりやすい解説
オサムシ
おさむし / 歩行虫
昆虫綱甲虫目オサムシ科の昆虫のうち、広義のオサムシ属Carabusに含まれる中・大形種の総称。世界に数百種を産するが、主として旧北区に分布し、ごく一部の種が北アメリカにすむ。体は普通長めで、上ばねは卵形ないし長卵形、ときに紡錘形。前胸は上ばねよりも幅が狭く、頭は前方に突き出し、前胸よりさらに細い。後翅(こうし)は一部の種を除いて退化し、小片状になっているので飛べない。このため移動が制限され、地理的な隔離が生じ、地域的な分化や変異が、体形、体表構造、色調などにみられ、種内にも多くの亜種や型が区別されている。
一般に地表で生活して夜間に活動し、肉食で、カタツムリ、ミミズ、他の昆虫、とくに鱗翅類(りんしるい)の幼虫などを捕食する。体が長く、頭胸部がとくに細く伸びたマイマイカブリのような種類は、カタツムリの殻内に頭を突っ込んで食べるのに適応したものと思われる。卵は土中に産み付けられ、幼虫も成虫と同じく肉食で、昼間は石や落ち葉などの下に隠れて夜間活動する。孵化(ふか)した幼虫は土中で蛹化(ようか)する。成虫は土中、ときには枯れ木内で集まって越冬するので、冬季に道沿いの崖(がけ)を掘って採集する方法がある。また、夏は糖蜜(とうみつ)や腐肉トラップで採集することができる。
この類は金属色の美しい種が多いので、世界各地に収集愛好家がいる。日本にいるオサムシは20種余であるが、それらには100に及ぶ亜種名や型名が与えられており、アイヌキンオサムシ、オオルリオサムシ、ツシマカブリモドキなどの美麗種や、日本列島にだけみられるマイマイカブリ、クロナガオサムシなどが含まれる。
オサムシ科Carabidaeには、オサムシ類に近いカタビロオサムシ、セダカオサムシの2類のほかに、マルクビゴミムシ、ミヤマメダカゴミムシ、ハンミョウモドキ、カワラゴミムシ、ツノヒゲゴミムシの5類(亜科)を含み、科をさらに広い意味で用いるときには、ヒゲブトオサムシ、ヒョウタンゴミムシ、セスジムシ、ゴミムシ、ときにはハンミョウの各科をも包含する。
[中根猛彦]