化学辞典 第2版 「バナジウム触媒」の解説
バナジウム触媒
バナジウムショクバイ
vanadium catalyst
バナジウムの触媒作用を利用した触媒.有名なのは酸化物による酸化触媒作用である.二酸化硫黄の接触酸化による硫酸製造法には,けいそう土などの多孔質担体にV2O5-K2SO4混合物を担持させた触媒が使われる.K2SO4は助触媒であり,V2O5と共融混合物をつくって,反応温度(450~600 ℃)においては融液状で作用するといわれる.ナフタレンあるいはo-キシレンの空気酸化によるフタル酸の製造においても同様の触媒が用いられている.TiO2に担持したV2O5は,アンモニアを用いる排気ガス中のNOの選択還元法の触媒として用いられていたが,同時に含まれるSO2をも酸化してしまうため,WO3-TiO2に置き換えられる傾向にある.また,アルミナに担持したものはアセチレンを低圧,低温で三量化してベンゼンを合成する触媒になり,とくに液体シンチレーション法による 14C 測定用のベンゼン合成に利用される.バナジウムの低級酸化物V2O3には水素化触媒作用があり,低級塩化物または塩化酸化バナジウム(Ⅲ)VClOは,アルキルアルミニウムなどを共触媒として,低級オレフィンのチーグラー型重合触媒(チーグラー触媒)になる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報