日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化バナジウム」の意味・わかりやすい解説
酸化バナジウム
さんかばなじうむ
vanadium oxide
バナジウムと酸素の化合物。バナジウムの酸化数が+Ⅱ~+Ⅴとなる各酸化物が知られている。
(1)酸化バナジウム(Ⅱ) 化学式VO、式量66.9。金属的で導電性を示す灰色粉末。
(2)酸化バナジウム(Ⅲ) 化学式V2O3、式量149.9。酸化バナジウム(Ⅴ)を高温度で水素還元して得られる黒色粉末で、組成は不定比である。
(3)酸化バナジウム(Ⅳ) 化学式VO2、式量82.9。酸化バナジウム(Ⅲ)と酸化バナジウム(Ⅴ)の等モル混合物を真空中で赤熱すると得られる黒色ないし暗赤色の粉末。
(4)酸化バナジウム(Ⅴ) 化学式V2O5、バナジウムの粉末を空気中で熱すると生ずる橙赤(とうせき)色の結晶で、式量181.9、融点690℃。1750℃で分解し、酸化バナジウム(Ⅲ)となる。
VO以外の酸化物は触媒として使われることが多い。酸化バナジウム(Ⅴ)の水和物はバナジン酸ともよばれ、水溶液中ではpHによって異なる各種のイソポリ酸イオンを与える。
[岩本振武]