無水フタル酸(読み)むすいふたるさん(英語表記)phthalic anhydride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「無水フタル酸」の意味・わかりやすい解説

無水フタル酸
むすいふたるさん
phthalic anhydride

酸無水物の一つで、フタル酸の二つのカルボキシ基カルボキシル基)から1分子の水がとれた構造をもつ。

 フタル酸を加熱して脱水すると得られるが、工業的には五酸化バナジウム触媒としてナフタレンまたはo(オルト)-キシレンを気相で酸化して製造する。無色の針状結晶で昇華性がある。水にはわずかに溶け、徐々に加水分解されてフタル酸になる。エーテルにもわずかに溶ける。プラスチック可塑剤であるフタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステルの製造や、アルキド樹脂フェノールフタレインフルオレセインエオシンなどの染料、医薬の合成原料として用いられる。

[廣田 穰 2016年11月18日]


無水フタル酸(データノート)
むすいふたるさんでーたのーと

無水フタル酸

 分子式 C8H4O3
 分子量 148.1
 融点  131.8℃
 沸点  285℃
 比重  1.527

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無水フタル酸」の意味・わかりやすい解説

無水フタル酸
むすいフタルさん
phthalic anhydride

化学式 C8H4O3フタル酸の無水物。特異臭をもつ針状晶。融点 (封管中) 131~132℃,沸点 284.5℃。昇華性がある。ナフタリンo -キシレンを酸化バナジウムなどを触媒として空気酸化して工業生産される。アルキド樹脂原料,色素 (フェノールフタレイン ) ,染料中間体 (アントラニル酸 ) などの原料となる。また,プラスチック可塑剤として用いられる。フタル酸エステルの原料としても重要である。

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