一般にはせん光のこと。
(1)荷電粒子が蛍光体に入射したとき,蛍光体の分子を励起したり電離するために荷電粒子が失ったエネルギーの一部が可視光または紫外線として発光する現象。特定の領域の波長をもつ光が入射してもシンチレーション現象が起きる。発生した光を観測することにより荷電粒子の数を求めることができる(シンチレーションカウンター)ので,初期の原子核実験では硫化亜鉛ZnSを蛍光板として発光回数を計測した。わずかな光量を電気信号に変える光電子増倍管と高性能の蛍光体の開発により,シンチレーション現象は原子核,高エネルギー物理学実験,放射線計測,さらに医療にも広く応用されている。蛍光体としてはヨウ化ナトリウムNaI,有機化合物,あるいは有機化合物の蛍光体をアクリルに混入したプラスチックシンチレーターなどがある。
執筆者:山本 祐靖(2)天文学ではいわゆる星の〈またたき〉のこと。地上数kmのところにある大きさ10cm程度の大気の粗密によって起こる回折現象である。惑星がまたたかないのは,地上から見たときに惑星の面の中にいくつもの大気の粗密の要素が重なって入っているために,ならされてしまうからである。シーイングseeingともいうが,シンチレーションは明るさの変動を意味することが多い。電波天文学では,電離層や惑星間空間での電子密度の粗密による回折のため起こる電波星の〈またたき〉をシンチレーションという。光の場合と同じく大きさが小さいものほど大きなシンチレーションを起こすので,シンチレーションの観測から電波星の見かけの大きさを推定することができる。
執筆者:平山 淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ラテン語のscintilla(英語ではa spark)に由来し、日常語としては火花のようにぴかりと光を発する意。閃光(せんこう)。物理現象としては、(1)物体(とくに蛍光体)に放射線が衝突する際に瞬間的に強く輝く光点が観測される現象、(2)恒星のまたたき(twinkling)、(3)晴れた日に野外で遠くの物が揺らいで見えるかげろう現象、などを表す用語として使用される。(1)は1903年にエルスターとガイテル、またクルックスがそれぞれ独立に発見した。原子物理学発展の初期にはラザフォード、ガイガーがこれを使ってラジウムC(ビスマス214)から放出されたα(アルファ)粒子の数を数え、またそれに伴って流れる電流とからα粒子のもっている電荷を測定した。現在でも荷電粒子、γ(ガンマ)線、中性子線などの検出に使われている。(2)は地上で恒星を観測するときに大気の揺らぎのためにとくに地平線に近い星が激しくまたたく現象で、ニュートンの『光学』にもその記述がある。(3)も(2)と同様な原因で生ずる身近な現象である。
[石黒浩三・久我隆弘]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
物質が外界からのいろいろな刺激を受けて発光する現象のうち,放射線の刺激によって発光する現象がある.物質によっては,発光持続時間がきわめて短く,瞬間的な弱いせん光として発光するものがある.このような発光現象をとくにシンチレーションという.この現象は,放射性同位元素の放射能測定に利用することができる.発光持続時間が短いほど高計数率の測定ができ,せん光の強さが入射放射線のエネルギーに比例した物質を選べば,放射線のエネルギー解析を行うこともできる.シンチレーション計数管がその応用例である.[別用語参照]シンチレーター
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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